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白と黒の天使 Part 3

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「否、まだ黙っていた方がいい。外とのつながりを断った後は、本人にも協力させた方がいいだろう」
そのタイミングは広海に俺が言うと周は、広海を背中から抱きしめ、肩に乗せた周の頭を広海が優しくなぜている。疲れて甘えてるなぁと僕はいつもの事だからにこにことその様子を見ていたんだけど、周が広海の首に軽く口づけし、擽ったそうに微笑む広海を見た轟さんは、不思議そうな表情がボッと火が噴きそうな勢いで真っ赤になっている。
「周、刺激が強すぎるみたいだぞ」
そんな轟を見た愁がにやりと零した言葉に視線が轟に集まり、咲良が吹き出し、つられるように皆が笑っている。
和やかな雰囲気の中、広海が始めようかと声を出すと皆の顔がすっと真面目モードに。
「友紀が指摘した三人は、まだ自宅謹慎中。学園の外だから探偵をやってる先輩に見張りは頼んだ。動きはないみたい」
広海が口火を切って話し出すと、
「広海、その他の顔ぶれはどうなんだ?」
咲良が机に並べられたリストに自分が行動を確認できるやつに印をつけ始める。
「印のつけてるのって咲良のクラス?」
僕が、そのリストに目を向け聞くと頷く。
「轟さん、秋乃のクラスってどこ?」
「 4 組」
「いつも一緒に居られる人は側にいるの?」
「いや、いないと思う」
僕は、学年が違う轟がガードするには限界があると思う。下級生の友達の顔を思い浮かべ秋乃と同じクラスはいないか考える。
「友紀、同じクラスのいてもダメだぞ。危険過ぎる」
先に広海に釘を刺され、仕方なく諦める。
「じゃあ、どうするの?」
僕は、少し拗ねてみるがダメなものはダメだと強く言われたらもう何も言えない。僕だってわかっているんだよ、でもなぁぁとまだ、諦めきれない。
ぼんやりとしてる僕は蚊帳の外って感じで、話は進んでいく。
「放課後は、秋乃も生徒会室に連れて行く。無理な時は友紀さんにお願いします。いいですか?」
いいよとOKサインをして、また、ぼんやりと考え出した僕を諦めたように広海と咲良が見てるけど、僕は気づかないふり。
兄二人は僕達と違う机で何やら話をしている。
机に置かれていた広海の携帯がカタカタ震える。
「もしもし、先輩。動いた。はい、わかりましたお願いします」
それを聞いていた周が
「チカからか?誰が動いた?」
「佐々木っていう奴。時雨とかいう店に入って行ったって」
周が自分達が見ていた資料に目を走らせ、「白木の組だな」と呟き携帯を持ち愁と廊下に出て行った。
僕が広海に佐々木ってどれと顔写真を見せると、こいつと指を指す。
この男、一番喧嘩慣れしてた人だよ。リーダー格って事かな。
「この佐々木っての他の人より強かったけど、何かやってる?」
「中学でボクシングをしていたはずだ。違うか他の奴と?」
「うん、間合いを取るのも上手いし、僕の攻撃避けたんだよね、確実に入ると思ったのに」
後二人はまるっきり話にならないからと轟を安心させつもりで言ったのに、友紀さんが強すぎるんですと溜息をつかれた。
「広海、ここに名前が挙がってる奴らの他に仲間がいる可能性は?」
「いないと思う。お互いに連絡を取り合っていたのは、全てピックアップして、篩いにかけ残ったのがこれだからな。何かあるのか?」
咲良が眉間に皺を寄せ考えていたが、一人の男を指差す。
「こいつ、付き合ってると噂の奴がいるが、俺の感じではこいつかなり怯えてる様に思うんだが……」
「誰だ、それは?」
「仁田って優等生、知ってるだろ?俺たちの直ぐ上の順位に名前を連ねてる奴」
「仁田か?名前が挙がっていたが、素行の悪さがないから外したが、裏の顔がありそうだな。リストに復帰させよう」
咲良はそれがいいと頷き他の資料にももう一度念入りに目を通し始めた。
「轟、お前飯は食べていけるか?」
廊下から戻って来た愁が、大丈夫なら俺らと一緒に食べていけと言いながらキッチンに周と入って行った。
「飯までなんてそんな無理です」
何故か手を体の前で振り慌てている。
「家で用意してくれてるのか?」
「それはないです、俺一人暮らしなんで」
「なら、なんでダメなんだ、遠慮するな」
と、周がキッチンから出てきて轟の頭を撫ぜる。
「お前ら、机の上、片付けろ。今日は、ここまでだ。飯食ってお開きにするぞ」
僕達は、「は~い」と机の上を片付け食事の用意を手伝う。
「皆んなで食べる食事は美味しいよ」
と轟に囁く。
うんと頷き用意をする俺たちに加わった。

佐々木という男が動いたから、何かあるかと、僕達は警戒した。
秋乃への張り付きの強化、ピックアップしたメンバーの動向に気をつけたり、連携プレーで秋乃を守ろうと。
愁達も父さんと僕達とは別行動で動いていたみたい。
初めて意識をして周りを見るなんてことした僕は、自分の周りの景色が変わった事に愕然としてしまった。
今迄周りに目を向けてるようで目の前を通り過ぎていただけなんだと。
秋乃に酷いことをした連中が近寄って来ないか、広海達からピックアップされたメンバーをなんとなく意識して見ると、意外とそこかしこで顔を合わしている。名前を覚えた佐々木なんかは、よく視界に入ってくる。同じ学年なんだし、会って当然なんだが、同じ学年という事さえ知らなかったのだから僕って……自分でも呆れる。
向こうも僕を捉え睨むからかな、僕もついつい見てしまうが、睨み返したりはしてないつもり、ただ見るだけ。
でも、この男が秋乃を、もしかしたら他にも被害者がいるかもしれないと思うとふつふつ怒りが表情に出るのも致し方なく、たまに凝視しているらしい。
「友紀、怖いよ」と咲良に言われてハッと慌てる事も。



季節が変わる頃、愁から裏稼業の人達が逮捕され、沢山のビデオや写真、ネガが押収されたと聞かされた。それらは、証拠として警察に保管されるから、外に流れる事はないらしい。でも、もう流れてしまった物までは回収は難しいと。その中に秋乃の物があるかは正直わからない。
これで、後は色々と集めた証拠で学園内を掃除するだけだと広海と轟は生徒会の表の仕事の後、裏の仕事に忙しくなった。
裏の仕事と言っても何も悪いことをしているわけじゃない。表だって動けない案件を秘密裏に処理してるだけ。秋乃の件もその部類に入る。

生徒会が忙しくなると、必然的に僕は放課後、秋乃の教室に迎えに行き一緒に帰ることが多くなってきた。
咲良もバイトがない日は、僕と行動してくれ、3人で帰ったりもした。たまに、休みの日に待ち合わせをして、映画やカラオケやら、普通の高校生がしている事も。最初こそは秋乃も戸惑っていたが、友達と外で遊ぶのは初めてみたいで、目をキラキラさせ、表情も明るくなってきていた。僕は、このまま何も無く過ごせるのではと考え始めてた。
その日は、咲良もバイトがあり、僕一人で秋乃の教室に向かっていた。
一年の教室と繋がった渡り廊下で、僕は佐々木と鉢合わせ。珍しく僕たちの周りには誰もいない。
「御坂、俺たちはもうあいつには手を出さない。坂下たちに仁田には手を出さないように言ってもらえないか」