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白と黒の天使 Part 2

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僕の事知ってるの?少年の口から僕の名前が出てビックリしたけど、その後、ボロボロ泣きだしたから僕オロオロしてる。
「ごめんね、怖かったよね。お願い泣かないで。保健室に行こうね」
ポケットからハンカチを出し、涙を拭いながら歩き始める。
「何で僕の事知ってるの?会った事あったかな?」
「先輩が中学の時酷いこと言ってしまって、僕…ごめんなさい。葛城先輩が凄く怖い顔で、何処にもいないって探しているの見て、僕、怖くなって逃げて……御坂先輩が僕の事探してるって聞いて……」
涙の止まらないまま、途切れ途切れで紡がれる言葉は、やっと謝ることが出来て必死に後悔したと伝わってくる。
そっか、あの時の下級生なんだ、会えて良かった。
「僕こそごめんね、君に辛い言葉を言わせてしまって。謝ろうと探していたんだけど、僕ってぼんやりだから、顔が思い出せなくて。でも、会えて良かった。本当にあの時はごめんね、許してくれる?」
少年は、謝る僕に先輩は悪くないのにと、より一層泣き始め、僕は頭を撫ぜ、落ち着かそうと必死になっていた。

下級生と言っても一つしか変わらないみたいなのにかなり幼く感じてしまう。僕もそうだったけどね。今はかなり成長したと思う。

「少し落ち着いたかな?」

顔を覗き込むと涙は止まったみたいだけど、目が真っ赤だしこの服で授業なんてかわいそうだよと、どうするかなぁと無意識に手触りの良い下級生の髪をさすりながら歩いている。

「先輩、恥ずかしいです。僕の事子供と思ってるでしょ?もう大丈夫ですから・・・」

俯いたまま頬を赤らめ呟く下級生が可愛くて、離れがたく

「じゃぁ、手を繋ごうか?」

「先輩、それも恥ずかしいです!」

そんなの無理ですと一歩離れてしまう。

「何で逃げるんだよ!並んで歩こう。他に怪我とかしてない?勢いよくこけてたけど」

そんなこと言わないでくださいと言わんばかりに少し頬を膨らませ

「大丈夫です」と一言。

「保健室行って、その後授業サボろうか?」

どこでサボろうかなぁと思案してる僕が可笑しかったのか下級生はくすくすと笑いだした。

「先輩って変わらないですね。見た目は素敵になったのに可愛いです」

「えぇぇぇ…可愛いの?僕カッコイイがいいのに」

少し拗ねたように言うと声を出して笑いだす。良かった、笑ってくれて。さっきはほんとに怖かっただろうな、ひとときでも忘れていられたらいいな。

「先輩、僕、戸川秋乃(とがわ あきの)って言います。今日はありがとうございました。僕なんか誰も助けてくれないと思っていたから」

嬉しいですと微笑むけど、なんだか諦めたような寂しいほほえみだった。
凄く気になるけど、今日はあんまり聞かない方がいいのかもと、その時は思った。後で後悔することになるとは、その時は思ってなかった。

「秋乃って綺麗な名前だね」

「ありがとうございます。先輩、体操服に着替えて授業に行きますね。先輩もサボったらダメですよ」

「授業に行っちゃうの?寂しいな。でも、そうだね学生だもんお勉強しなきゃね」

「そうですね。じゃ、先輩ありがとうございました」

頭を下げ校舎の方に走って行った。後姿をぼんやりと眺めていると頭をポンポンと叩かれ上目づかいに見上げるとやっぱりそこには広海が立っていた。

「さっきの誰か知ってるのか?」

「秋乃君」

「何故一緒にいた?あいつには一人では近づくな!」

「何か知っているんだね?教えてって言ったら?」

「もちろん教える。一人で会わないと約束するなら」

「解った、秋乃君を襲っていた人達の事も知っているんだよね」

「また、襲われてたのか?」

広海の大きなため息が聞こえる。今回だけじゃないんだ、何があるんだろう?

「殴られてるばかりじゃないみたいだけど、あれってたぶん性的暴行じゃないかな?」

「あぁ、たぶんな」

広海も知っていて見ない振りしてるのかと、見上げた目で睨んでしまった。

「生徒会が動いてるから、もう少し待て!あいつの傍に一人守るの付けてるから」

「そう?じゃ何で今日は?」

隣で息をのむ音が聞こえ、しばらくして「すまん」と小さい声が聞こえた。

「襲っていた人達って下級生?」

「俺らと同年」

「少しだけ怪我させたかも……」

「少しだけか?」

少し考え込み「骨は折ってないと思う」と答えたけど…腕をひねるまでに何度か避けながらも拳は当たっていたかも。

「骨はねぇ……」

また、ため息を零してる。

「友紀も強くなったな」

少しさみしそうな声だった。

僕、ほんとに強くなったんだろうか?
背はかなり伸び、180センチまで後少し、体を動かすようになり筋肉もついて体重も増えた。
でも、兄さん達や広海、咲良と並ぶとやはり細く頼りない感じがしてしまう。

時々、夢にうなされ目が醒める時があるし、愁に甘えたくて仕方ない。
愁に向ける想いが家族としてでなく一人の男と見ている僕。心も体も愛されたい願いは一生叶わない。
ならば、家族として生きるか、一人で生きるか、僕は家族としてを選んだ。強くなんかない、弱くて醜い自分が傷つかないように幾重にも鎧を身につけて来ただけのように思う。

広海は生徒会で忙しくなり、咲良はバイトを増やしたみたいですまんと言い忙しく帰って行く日が多い。
必然的に僕は最近一人、だからと言って昔ほど寂しいと落ち込む事は無い。僕には部活に顔を出せば、好きな写真の事で話に花を咲かす事の出来る仲間達もいるから。
「まっちゃん、今日は?何、怖い顔して?」

部室のドアを開けるとそこには、まっちゃん事、松田忠臣〔まつだ ただおみ〕が難しい顔で携帯を睨んでいた。
「アッ、友紀ちゃんこれだよ!見て!」
まっちゃんが差し出した携帯の画面には、桜並木を撮影した写真が並んでいた。その中の一つをまっちゃんは拡大してくれる。
そこにピントはズレて解り難いが人が太い幹に吊るされているように見える。
「これ人だよね?」
僕の声は少し掠れていた。ぼんやりとしているが、全裸の様に見え、体が緊張感に強張る。
「意識して取って無いからこれ以上は無理だ。でも、人だし、服着てないよな?」
まっちゃんの顔の筋肉がヒクヒクしているような、かなり怒りが混じった怖い声音になっている。
「これ専門家だともう少し鮮明に出来るかな?」
もしかしたら勝美さんなら、内密にしてくれるかもと思い、口に出すと
「友紀ちゃん、鮮明にしてどうすんだ?」
まっちゃんの視線が怒気を孕み僕を睨む。答え次第で俺は許さないとその視線は言っている。
「僕の知り合いに似てる。もしそうなら助けないと、こんな事されていいはずない」
僕の答えにホッと息を吐くが、許可を出すのを渋っている。
「友紀ちゃん一人で動かない!約束出来る?俺も一緒にならこの写真他に見せてもいいよ」
僕は、まっちゃんを危ない目に合わせたくないが、僕を見つめるその瞳は揺るがない意思の強さを感じ頷くしかなかった。
僕は、直ぐに勝美さんに時間が取れたら会って欲しい旨ラインを送る。