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白と黒の天使 Part 2

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光一さんと何度か会って、愁の事相談したりもした。写真に興味があると言えば、色んな事を話してくれる。古いカメラだけど使いなと自分のカメラを僕に持たせてくれた時、僕は抱きつき泣いてしまった。
本屋で写真集に目が行くことが多くなり、どんどん写真に興味が湧いてくる。
僕も、心に残るものを撮りたい、見た人がほんの少しでも笑みを零せるようなそんな写真を。

愁は、そんな僕を時々、スタジオに連れて行ってくれる。もちろん光一さんがいる時に。

スタジオの片隅で愁たちを眺め、カッコいいとは思う。でも、僕はポーズをとるモデルを撮ることより、その周りのスタッフさんたちの動きに目を奪われている。

高校の写真部に入って、細々と写真を撮り、自分のカメラを買う為バイトも始めた。

光一さん紹介で写真の展示を主にしている画廊の手伝い。いろんな人の写真を見るのも勉強だと進めてくれた。
そして今僕の手に、借り物でなく自分のカメラがある。

自分の力だけで手に入れたものじゃないけど、沢山の人たちの助けを借りてだったけど、僕が初めて働いたお金で買った大切な宝物。
僕の思いプラスみんなの思いもいっぱい詰まってる。

大切な大切な宝物、きっとこのカメラを覗くと素敵な風景が見えるような気がする。僕の未来……、そうだといいな。


高校の二年になり、人数の少ない写真部で僕は何故か副部長なんて大役を任され、かなりビビッている。でも、もう僕は逃げないと決めたから、努力はする。
出来ないことは助けてと声に出してみる。僕は、少しずつ自分の殻を破って外の世界に踏み出したい。

そして、いつか写真に僕の心の色をのせる事が出来るようになったかなぁと思い始めていた。

光一さんに京都に紅葉を撮りに行かないか?と誘われ嬉しくて直ぐにでも飛び出してしまいそうだった。泊りがけの旅行に愁はあまり良い顔をせず、僕は少し迷っている。

「友紀、行きたいんだろ?俺も一緒に行ってもいいか?」

友紀と一緒に旅行初めてだろと、嬉しそうな寂しそうな表情で見つめるから、一緒がいいねと僕も。
ホントは一緒が良かったのを、愁が気付いてくれたのが嬉しい。

三人で行くのかと思っていると、当日家の前には、勝美さんの大きな車に広海と周に咲良と咲良の弟、光一さんが乗っていた。

「おはようございます、ってなんでみんないるの?」
僕が驚きの声をあげてると横に来た愁が、「お前らなぁ…」と深い溜息を零していた。

殆どマイクロバスに近い大きな車に8人、狭いかと思ったけど、そうでもない。

後ろの座席がコの字型のソファでみんなの顔が見れる。
「みんな乗ったか?出発するぞ!」
光一さんの掛け声で車は走り出した。
「咲良、紹介してよ。もしかして、弟?」
咲良の隣で恥ずかしそうにほんのり頬を赤らめている可愛い少年。

「綺羅って言う。みんなに会わしたくて引っ張ってきた」
咲良のサラッとした紹介の後、少年は少し緊張気味に自己紹介。
「館脇綺羅〔たてわき きら〕と言います。兄がいつもお世話になります。」
僕と広海とで「可愛いぃぃ」と雄叫びをあげるのに、兄二人は耳を塞ぐ。
「皆さんカッコ良くて羨ましいです」
耳まで赤くしてる綺羅君に、咲良が片眉をピクッとさせ、
「綺羅は、俺が一番だよな」
なんて言うもんだから、一瞬沈黙の後全員が爆笑した。
一人拗ねる咲良に綺羅君が、兄さんは別格なのと慰める姿は、微笑ましい。

初めての旅行は、それは楽しいものになり、僕もかなり良い感じの写真を撮ることが出来たと思っている。

好きな事を出来る事が幸せで、勉強も部活も楽しい。

充実した毎日、広い庭園をもつ学園には、季節感があちこちにあり僕の被写体はたくさんあった。

その日は、色づき始めた銀杏並木を眺めていた。
「嫌ぁぁ、もう、お願い許してェ」
悲鳴の様な声が聞こえ僕は周りに目を走らす。旧校舎の陰から一人少年が走り出てきた。
服は乱れ、赤く腫れた顔は殴られた跡。
慌てる足元が枯葉に滑り、勢いよくこけてしまっている。
僕は、駆け寄り助け起こそうとすると、嫌々をする様に暴れる。
「大丈夫だから。こっち見て、僕は君に何もしないから、落ち着いて」
必死で抱きしめ顔を上げさせ、暴力を振るった相手と違う事を確認させる。
足音が旧校舎から聞こえ、僕たちに近づいてくる。
逃げた方が良いか、悩む暇もなく抱き起こそうとしていた僕に声がかかる。
「邪魔をするな、さっさとそいつを置いて行け」

ふざけるな!
睨みあげた視線の先には男が三人、だらし無く襟元を開けた、派手な色の髪。

「置いて行くわけにいかない。怪我をしてるし、連れて行くよ」
「ふざけるな!」
「ふざけてない!」
僕にしてはかなり大きい声で返していた。
少年から腕を解き、前に進み出る。
3対1かなり分が悪いなと思いながらも、引くわけにいかない。
喧嘩は嫌いだ、でも、自分の身は自分で守る、そう決めた日に海里さんに空手を教えて欲しいと頼んだ。
でも、僕はまだ小さく細身の体で腕力もイマイチ。そこで、紹介して貰った道場で合気道を教わった。
今も続けている。あの頃より成長した僕は、空手も少し出来る。
逃げる隙ぐらいは作れるかもしれない。
「僕は、この子を保健室に連れて行くよ、そっちこそ邪魔は許さない」
こんな強気の言葉を人に向けたことがない僕は、かなり怒っていた。

「偉そうに!女みたいな顔で凄んでも怖くないぜ。俺たちの相手、お前がするんやったら、そいつ助けたる」
どうすると言うように鼻で笑う姿に、ブチっと何かが切れた気がした。
「僕の好みじゃない、断る」
ふざけるな!と決まり文句を言いながら向かってくる。頭に血がのぼった男の動きなど軽く交わし、首に軽く一撃。
後二人、間合いを詰める。
一人が突っ込んでくるから、避けながら回し蹴り。嘘、避けた?
この二人喧嘩慣れしてる?ヤバイなぁ~、なんて考えてたら拳が飛んでくる。腕を掴んで投げて関節を捻ると、男から悲鳴が…ごめんね。
「もう、これぐらいで引いてくれません?」
腕を捻り上げた男を盾にもう一人と対峙する。
舌打ちが聞こえ男は後ずさりながら走って行った。だから、手の中の男を前に突き放すと、「覚えてろ!」
と、またしても決まり文句と共に逃げて行った。
はぁぁ、なんとか持ちこたえた。
ガックリと肩を落として振り返ると少年は、目を見張り僕を見つめていた。
んん~、何処かで会った事ある様なないような……。
「大丈夫?唇切れてるよ、血は止まってるけど痛そう。保健室に行こうね、立てるかな?肩に捕まって。ごめんね、僕、力無くて抱えるの無理だから」
少年が思いっきり首を横に振って、慌てて立ち上がった。
「だ、だ、大丈夫です」
「落ち着こうね、もう大丈夫だから。今の喧嘩、見なかったことにしてね。僕、喧嘩は嫌いなんだ。先生にバレたら怒られるしね」
服の汚れを払い、ボタンが飛んだシャツをそっと合わせる。
「御坂先輩……僕……」