小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

白と黒の天使 Part 2

INDEX|4ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

僕を離そうとしない腕を嬉しく思うが、甘えてはいけないと「兄さん…」と溜息を溢す。
「いい加減にしろ!愁、早く支度しろ!」
ドアに凭れ溜息を溢す周が立っていた。
「友紀、おはよう。よく寝たから色艶いいぞ」
エッ、慌てて顔を触る僕を見て、堪らんと笑いだす。
「周兄、揶揄って酷い!」
愁を急き立て、追い出した周は僕の側に来て
「友紀、飯は?歩けるか?」
「お腹空いた」
声に重なるようにお腹の虫が鳴り顔が熱くなる。
笑いながらも僕の腕を取り支えてくれる。
カウンターに腰掛け出された朝食を食べ始めていた時に、広海と咲良がおはようとやって来た。
「久しぶりに友紀の笑い声だ」
交互に頭を撫ぜていく二人に良かったなと微笑まれる。
支度を済ませリビングに来た愁が、僕のトーストを一枚取り
「友紀、具合い悪くなったら携帯鳴らせ」と頭を撫ぜる手に縋りたくなる。
「うん、わかった。行ってらっしゃい」
「行ってくるな。大人しくしてろよ」
と、みんなは出かけて行った。
一人になると寂しくてポロリと頬を涙が滑り落ちた。

夕方、愁と二人夕食の用意をしていると、父と海里さんが帰って来た。
「友紀君、おはよう」
海里さんが夕方なのにそんな挨拶をして微笑みながら僕の頭を撫ぜる。
父は、良かったと頷くだけ、それでもその瞳は優しく僕の瞳はウルウルしてくる。
四人で囲む食卓は楽しい。
海里さんが話す父の話しは楽しかった。優しい父が海里さんにはかなり厳しい事も、海里さんがいつも虐めるんですと、愁に情けない声で愚痴を溢す姿を微笑みながら見る父は、凄く海里さんを信頼し、大切に思っている事を感じる。
明日は学校に行くよと、愁と二人先に席を立った。
「友紀、今日は自分の部屋に寝るか?」
愁の後ろに着いて来ていた僕は、当然のように愁の部屋に行こうとして、馬鹿な自分に慌てた。
「うん、明日の用意もあるから」
なんだか、寂しそうに、「そうか」と呟きおやすみと告げ部屋に入ってしまった。振り向いてくれなかった愁に拒絶されたようでドアに額をつけ、微かな声でおやすみなさいと囁き離れた。自分の部屋のベットに体を投げ出し、冷たい布団が尚更寂しく感じる。
あんまり眠れたとは言えない冴えない頭で、リビングに降りて行くと愁が朝食の用意をしていた。
「おはよう」
スッキリしない目を擦りながらフラフラと起きてきた僕に愁は、心配そうな顔をする。
「おはよう、友紀具合悪いのか?眠れなかったか?」
「ううん大丈夫。顔洗ってくる」
早く目を覚まさないと愁が心配する。
洗面所で顔を洗い、少しスッキリした。大丈夫だ、寝過ぎで心配かけたのに今度は寝不足なんかで心配かけられない。
リビングに戻るともう、カウンターには食事が並んでいた。
「お腹空いたぁ、食べていい?」
「早く食べろ、もう直ぐ周達も来るぞ」
「エェェ、もうそんな時間?」
急いで食事を済ませて食べ終わった食器を洗おうとすると
「先に支度して来い、時間が無い」
「きゃぁ、ごめん。明日は早く起きるね」
「あゝ、今日はしてやるよ」
ごめんと、言って支度をしに部屋に駆け込んだ。
支度を済ませ部屋を出ようとした時
「友紀、まだか?行くぞ」
「今行く、待って」
階段を駆け下り玄関を飛び出す。
「友紀、鍵!」
あっ!と玄関に戻り鍵を閉めみんなの所に駆け寄る。
「友紀、おはよう」
広海と咲良が両側から挨拶が飛んでくる。
「おはよう、寝坊しちゃった、ごめんね」
「まだ、大丈夫、時間あるから」
咲良が僕の頭を撫ぜる。
兄二人は僕たちの前を悠然と歩いているが、時折俺たちの戯れ合う姿を振り返り笑みをこぼす。
そんなありふれた日常が幸せでたまらない。


その日の昼休みに生徒会長が僕に謝りに来た。
僕こそ謝らないといけないのに。愁の周りは優しい人がいっぱい。
「僕こそ、心配かけてすみません」
「俺も兄の仲間に入れてくれるかな?頼りないけどね」
そんな事をウインク付きで言うものだから、愁と周に睨まれ肩を竦める会長がいた。
なんだか何に怯えていたのかわからなくなって笑い声をたてていた。
でも、僕は凄く今気になっている事があって隣の愁兄の袖を引っ張る。
「友紀どうした?」
僕は愁の腕を引き寄せ耳元で
「会長の名前なんて言うの?」
その質問に愁は目をぱちくり、エェェ…嘘だろうと頭を抱えた。
「愁どうしたんだ?」
落ち着いたイメージのある愁が奇声を上げ、僕は真っ赤になり俯いているから、周りはハテナマークが飛び交っている。
愁は、咳払いをして「友紀、ちょっと向こうで話そうか」と友紀の手を取り、声が聞こえないあたりまで連れて行った。
「友紀、会長の名前は、柘植敦士〔つげ あつし〕だ。俺、言ってなかったかもな。ごめん。」
僕が忘れてしまったというか覚える気が無かっただけなのに、愁は自分のミスのように言う。
「ごめん……」
「気にするな、会長の事は大丈夫か?」
申し訳なく俯く僕の頭を優しく撫ぜてくれる愁に、僕はずっとこの手が僕のものならいいのにと、馬鹿な事を考えていた。
「愁、どうした?昼休みが終わってしまうぞ!」
向かい合い話している僕たちが気になったみたいで、周が寄ってくる。
「大したことじゃないから」
「友紀、本当か?」
「うん、内緒にしてくれる?」
「内緒って何だ?」
「会長の名前を教えてもらったの」
恥ずかしくて頬を赤らめボソボソという僕に周は、はぁ?と驚き、大笑いした。
大笑いする周に「内緒だよ」と念を押しみんなの所に戻った。

あれから、僕は時々発作のように寝てしまう事があったが、眠る時間は長いものではなかった。只、それがいつ襲って来るかわからないというのが不安ではあったが、特別変わった事もなく穏やかな毎日を過ごした。
そして、僕たちは3年になり、兄さん達は受験で益々忙しくなっていった。
夏休みを間近に控え、僕は少し浮足だっていたのかもしれない。
愁達に甘え、側にいてくれることが当たり前のように感じていた。
だから、夏休みの予定も愁達と一緒に過ごすんだと。
「すみません、御坂友紀さんですか?お話しがあります」
僕が一人教室にいた放課後の教室、赤のネクタイの少年が僕の側に立っていた。
「何?」
「貴方は何故、葛城先輩と一緒にいるんですか?迷惑だと思わないんですか?」
僕は、急に何を言われたのかわからなかった。僕の前に立つ少年をポカンと見上げた。
見上げた僕を見つめる少年は、怒りを滲ませた鋭い視線で僕を睨む。
何故?僕は…やはり僕は…嫌われて…、暗い思いがじわじわと広がりつつある中、少年の口が開く。
「貴方みたいな捨てられたゴミが、先輩に愛されるわけない。その目で誘惑したのか?先輩に近づくな!消えろ!」
愛されない…ゴミ…その目で誘惑?……そんな事していない……でも……
僕は、どうすればいい?自分の中に入り込んでしまっていた僕が顔を上げた時には教室にはもう誰もいなかった。