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白と黒の天使 Part 2

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「会長、今から話す事、ここだけの話にしていただけますか?」
「俺の胸に仕舞えばいいんだな、分かった」
「ありがとうございます。友紀と俺に血のつながりが無いのは知っていますよね」
「苗字が違うからな、親戚の子を引き取るかして一緒住んでるのかなとは思っていたが」
「いえ、全くの他人です。友紀は母親に捨てられ餓死しかけた所を俺が偶然見つけて、父に連絡して助けてもらいました。俺が小学生の頃の話ですが。孤児院に引き取れ、この中学に上がるのをきっかけに父が引き取り一緒に住んでます。友紀の母親は行方がわからないので、苗字はそのままですが。友紀は母親に二度捨てられてるからなのか、自分はゴミの様に捨てられたいらない子、誰からも必要とされないと思っているところがあります。唯一の居場所が俺の側というだけなんです。だから、俺があの時、背を向けた事が友紀を傷つけたんです。そして、友紀は慢性的に暴力を受けていたみたいで、急な接触を恐れます。それを知っておいてください」
唖然とした顔で聞いていた会長の瞳からポロリと涙が溢れ落ちた。
まさか自分でも泣くとは思っていなかった会長は顔をほんのり赤らめ解ったと顔を伏せた。
俺は、いきなり殴った周には謝らせますと言い生徒会室を後にして、屋上に向かった。


屋上の扉を開けると壁に凭れ本を読む咲良、ゲームに夢中の広海、広海のの腰に腕を回し抱きついたままごろりと寝る周。
「愁さんおかえりなさい」
咲良が俺の足音に気づき顔を上げる。
「広海、あまり周を甘やかすな」
「煩い、広海は俺のだから甘えてもいいんだ、お前も友紀に甘えてみろ」
広海のお腹にしがみついたまま抗議する周の態度が子供染みていて笑える。
「周、会長に謝れよ」
「解った」
会長と言った俺の言葉に肩がびくりとした周の頭を優しく撫ぜる広海、羨ましくが、なんか腹がたつから、周の頭をポカリと叩いていた。
「ほら、帰るぞ!」
周が痛い、と喚きながら起き上がり、広海を立ち上がらせている。咲良が読んでた本を鞄にしまい、俺の隣に来て、周達を眺め、良いなぁと溢す言葉に頭を撫ぜてしまった。
「愁さん、お父さんの非番の日にお会いできないですか?」
弟の事を相談されていたのを父にまだはっきり言ってなかったのを思い出した。
「相談があるとは言ってあるが、内容まではまだ話してないが、咲良から話すか?」
「はい、その方が俺を解ってもらえると思います」
不安そうな言葉にもどこか決意の様な強さを感じ、咲良の肩を抱き、俺も側にいるからと、屋上を出る。後ろから甘えた声が聞こえるが、今日は無視だ。

家に向う途中、携帯を見たが、父からの連絡は入ってなかった。
「ただいま、親父いるのか?」
玄関の鍵が開いていたから、声をかけながらリビングに向うと、そこには海里さんがいた。
「愁君おかえり」
「ただいま、親父は?」
「仕事に行ったよ。友紀君は部屋にいるから。大丈夫、今日一度目を覚ましてご飯食べて、また寝ちゃったけどね」
「飯食べたんだ、良かった」
着替えてくると自分の部屋に行くと、ベッドには友紀が眠っていた。部屋の隅には布団が積まれている。親父もわかってんじゃん。友紀の穏やかな寝顔に手を伸ばして柔らかな頬に指を滑らす。
「愁……」
僅かに口元に笑みが浮かび呟かれた自分の名に抑えられない衝動に口付けていた。
『何やってんだ、俺は』
眠る友紀にしか口付けできない自分が情けない。自分の気持ちを知られ友紀に嫌われるのが、怖くて仕方ない。
後手に閉めたドアがカチャリと音がする。友紀への愛しさを越えた欲情が溢れ出さなように閉めた心のドアの音と重なる。
「海里さん、ご飯はまだ?」
「腹ペコ、愁君のご飯が食べたくて待ってました」
嬉しそうに俺を見る海里さん、尻尾があれば、盛大に振られているのが見えそうだ。
「簡単な物になるけどいいか?」
「愁君の作る飯なら何でも美味しいから、今日は楽しみだったんだよな」
「そう言えば、海里さん久しぶりだよな、忙しい?」
「そんなに忙しく無いけど、先輩が毎日飯食いに来るなら食費入れろって言うから…」
尻しぼみの言葉に笑ってしまう。
「親父も意地悪だな、本当は嬉しいんだぜ」
海里さんは、そうかな?とか言いながらも嬉しそうだ。
昨日の残り物のお浸しに酢の物、ブリの照り焼きをテーブルに並べ、二人手を合わせ食べ始める。
「海里さんも病院に行った?」
「うん、俺の車で行ったから、医者と話したのは先輩だけだよ」
「そっか、親父帰ったら聞いてみる」
「友紀君、ご飯食べながらも寝てたよ。自分で起きて来て椅子に座ってさ、動かないからスープを口元に持って行ったら口を開けるんだよ。なんか雛鳥に餌をあげてる親鳥の気分だったなぁ」
「友紀、起きたらそんな事覚えてるのかな?」
どうだろうな?と話をしながら食事を済ませるとご馳走さまと言って海里さんは帰って行った。親父は今日も遅いみたい、友紀の側に布団を敷き、横になるがなかなか寝付かれなかった。夜中も大分回った頃親父が帰ってきて部屋を覗くのをうつらうつらしながら感じていた。

「兄さん、起きなきゃ遅刻するよ」目覚ましが枕元で遠慮がちにメロディーを奏でているが、重い体と瞼にもう少しと布団に潜り込もうとした俺の耳に飛び込んできた友紀の声に飛び起きた。
「友紀……」
ベッドに座った友紀を抱きしめた。
「兄さんどうしたの?」
腕を肩に回し隣に座り抱き寄せる。
「友紀、眠くないか?」
「うん、眠くないけどなんだか怠い」
「友紀がこのまま目覚めなかったらと胸が潰れそうだったよ。」
愁の掠れた声が耳に心地良く、肩に頭を乗せうっとりとしていた。
「友紀、また寝ちゃったのか?」
情けない声がして吹き出してしまう。
「寝てない、起きているよ。僕、そんなに寝てたの?」
何かあったかなと思い起こしていた僕の脳裏に、額にキスをされる自分が、背中を向け去って行く愁の映像が駆け巡り、その時感じた絶望が蘇り震えが止まらない。
「友紀、寒いのか?」
声に促さるように顔を上げた友紀の頬を涙がボロボロと溢れていた。
「兄さんが…いなく…なる…嫌われたって……」
途切れ途切れに紡がれる友紀の言葉に愁の胸は締め付けられ、苦しい痛みに顔を歪ませる。
「友紀、ごめん。ずっと一緒にいるから、ずっと好きだから」
捨てられる恐怖に怯える僕を抱きしめてくれる愁の腕が幻でないことを確かめるように僕はしがみつき、離れて行かないでほしいと願いながらも愁を縛ってはいけないと、相反する思いで体も心も軋み始めていた。
「友紀、お腹空いたか?何か食べれるか?」
涙が収まると甲斐甲斐しく世話を焼こうとする。
「兄さん、僕は大丈夫だから早く支度をしないと遅刻するよ」
「今日は、休む」
「兄さん、子供みたいな事を言ってるの」
拗ねた表情を見せ
「友紀は俺がいたら邪魔なのか?」
「そんな事を言ってないじゃん。ただ、僕は兄さんのお荷物になりたくないんだよ」
「友紀はお荷物なんかじゃない」