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白と黒の天使 Part 2

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周は、コップを握り割った手にも驚いたが、会長が友紀にした事に、はぁ?と大きな声を出していた。
広海と咲良が周の大きな声にキッチンに駆け寄り俺の手を見て慌てた。
「愁さん、手……」
血だらけの手を水で流し、
「大丈夫だ」
と冷静に答える愁に不安になる。
「大丈夫だ、お前らは宿題をしてろ。愁、手を見せろ。馬鹿が、かなり深く切ってんな。手当てするぞ!」
世話の焼ける奴ばかりだと溜息を零し救急箱を探しに洗面所に消えた。
「愁さん……」
心配する二人に大丈夫だと笑い、血の止まらない手をタオルで包みソファに座り込んでしまった。
「手を出せ」
救急箱を抱え、俺の隣に座った周は、冷静なように見えたが、青白い怒りの炎が立ち上っているように思えた。
傷の手当を済ませ、キッチンに立とうとした俺は周にそんな手でキッチンに立つなと一括され、ソファに座りなおした。
結局、周一人で夕食を作り終えた。
「さっさと食べるぞ、咲良、食べながらでいいか?何かあったのか?」
「急ぎの事じゃ無いんで、いいですよ」
「馬鹿が、遠慮するな」
「すいません、弟の事で…一緒に住みたいと思っているんです。でも、俺にはまだその資格がない。どうすればいいのか」
俯いてしまった咲良に愁は、大丈夫何かあるはずだと言うが、俺たちもまだ親の庇護を受けている身だけに答えを出せないでいる。
結局、大人の力を借りるしかないなと、溜息が溢れる内容で終わった。
周達が帰り、まだ眠り続ける友紀、食事もしていない状態だけに起こすべきか悩んでいる時、玄関の開く音が親父の帰宅を告げる。
「おかえり」
玄関まで出迎え、リビングに向かいながら友紀の事を話す。
「いつから眠っているんだ?」
「放課後からだから時間的にはそんなにたっていない。普通に眠ったのなら心配しないんだけど、大丈夫だろうか?」
「明日の朝まで、様子を見てだな。今日はもう遅いから、お前も寝ろ」
「それと、相談もあったんだ。親父の意見を聞きたい」
「大人が出向かないといけない悩みか?」
「うん、俺らでは現状は変えようがないと思う」
「そうか、すぐに答えが必要か?」
「いや、すぐでなくていい」
「すまん、後数時間で出て行くから非番の日でいいか?」
「それは、大丈夫。それより、親父も若くないんだから無理するなよ」
「あゝ、わかった。もう遅いから寝ろ」
「うん、おやすみ」
着替えをし、俺は自分のベットで眠る友紀の横にそっと体を滑らせ、友紀を優しく包む様に抱き締め、「友紀、ごめんな」囁き瞼を閉じた。

朝を迎えても友紀は目覚めなかった。
「翔、友紀を病院に連れて行ってみるよ。食事に起きないのはあまり良くないらしい。入院とか、何かあればメール入れておくから、お前は今、自分がしないといけないことしろ。サボるなよ」
親父は昨日のうちに医者に連絡を取っていたみたいだ。
「わかってる、友紀頼むな」
「俺の息子だ、当たり前のことだ」
うん、じゃ行ってくると俺は会長と話す事を第一に考えた。友紀には親父がついてるしな。
あれ?海里さんはついて行くのかな?まぁいいか。
少し歩いていると向こうから戯れ合う二人と無表情の男達がやってきた。
「出迎えか?ご苦労だ」
茶化して言うと、周はニヤリと笑い、その横で咲良と広海が嬉しそうに笑っている。
「お姫様は目覚めたようだな。今日は大事を取って休ませたか?」
過保護だからなぁとUターンして学校へと向かう。
「お姫様はまだおやすみ中。親父が今日病院に連れて行くよ」
「おい、お前帰れ。付いていてやれ」
首を横に振った俺に何故だ?と怖い視線を向ける。
「親父がついてる。それに俺が今しないといけないことをしろと言われたからな。俺はそっちを先に片付ける」
周は俺の言った意味がわかったのか、顔が少し引き攣り視線が泳いだ。
「周、何をした?」
広海と咲良が何故か歩く速度を上げ、俺たちから離れて行く。かなり離れたのを確かめ
「俺たち先に行くから、ごゆっくり」
叫ぶと走って行った。
「あいつらも知ってるから逃げたか?」
俺と視線を合わそうとしないだけでなく、距離まで取ろうとする。
「まさか、会長を殴ってないだろうな!」
「だからなぁそのなんだ…」
ギクッと体を揺らし訳のわからない言い訳を言おうとしたが、思いつかなったのだろう、ガックリと肩を落とした。
俺は盛大な溜息を零した。
放課後、生徒会室に向かう。周には、二人で話させてくれと頼むと屋上で待ってると言われ、一人で今、ドアの前で少し緊張した体に深呼吸などして空気を送り込んでる。
「失礼します」
部屋には会長一人、優雅に紅茶を飲み本を読んでいた。
「お疲れ、今日は一人?」
顔を上げた会長の顔には薄っすらと赤い鬱血があった。眉を寄せ見つめた俺に苦笑いして目を伏せた。
「会長、すいません。周が…」
「気にするな、今回は100%俺が悪い。どれだけ大事にしてるか知っていたのに軽はずみな事をした。すまなかった」
席を立ち俺に頭を下げるから俺は慌ててしまった。
「会長、頭を上げてください。俺の態度が一番友紀を傷つけたんです」
ありがとうと頭を上げ情けない表情で
「今日は友紀君は?」
「病院に連れて行ってます」
「病院ってそんなに悪いのか?」
「わからないんです。起きないので。でも、父から連絡が入っていないので入院にはなっていないようですから」
微笑むと会長も少し安堵したのかトスンと椅子に腰掛けた。
「俺は、愁達が羨ましかったのかな、一緒に昼飯を食べていてもどこか友紀君は距離を置いていて。寂しい様な俺にも懐いてほしかったなぁなんて、馬鹿な事をした」
机に突っ伏した会長の独り言のような、か細い声が普段の自信に満ちた姿とのギャップに笑ってしまった。
「周から友紀の事を何か聞きましたか?」
「いや、何も。いきなり殴られたからな、あんな周を初めて見たよ」
いつも柔かな空気を纏っている周だからな、かなりびっくりしただろうな。
「周は普段はあんなですけど、俺より短気ですよ」
そうみたいだなと苦笑する会長に確認しておく事がありますと向かいの席に座った。
「会長は、友紀への感情はどんな感情ですか?」
静かに瞼を閉じ考えていた会長は
「可愛いと思った、自分も慕われたいと。俺は一人っ子だからな、お前達が羨ましかった。俺にもこんな弟がいたらなぁなんてな」
その表情は穏やかなだった。
「恋愛感情ではないですよね」
「あゝそれは無い」
「それを聞いて安心しました。俺は、友紀を恋愛感情で愛してますから、会長がライバルでなくて良かったです」
少し驚いた顔を見せたが、納得して微笑むと
「そうだな、二人を見てれば分かった事だよな、両思いだよな」
「会長、両思いじゃないですけどね。友紀は俺を兄としか見てないですよ」
「愁、それ本気で言ってるのか?お前意外と鈍いな」
「鈍いって何ですか?友紀は側にいる俺を慕っているだけです。命を助けたのが俺だって」
「命を助けたって、病気とかしたのか?」