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白と黒の天使 Part 2

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Episode.2


僕の傍にはいつも広海と咲良がいる、それが当たり前のような中学生活。二人はクラスでも人気者で僕は本当に一緒にいていいのだろうか?こんな取り柄のない駄目な僕がと、思う事が多くなっているのも隠せない事実。僕がぼんやりさんだから、二人はかまってくれているだけなのに居心地が良いからと甘えている僕。

兄二人にしても僕たちによく会いに来てくれる。生徒会の役員をやる二人はかなり忙しい。時々、同じ生徒会のメンバーも連れてきて一緒に昼を食べる時もある。

そんな時は愁兄は、僕をあまり見ない。きっと、こんなみっともない僕が弟だと知られたくないのだと思う。僕もひたすら下を向いたままでいる。

今日も、生徒会長が一緒だと言われ、うんと笑顔を返したが泣きそうになっていた。

何故って、愁兄は副会長で会長と話す時の表情が凄く信頼している人なのだとわかるから。

その会長に僕は放課後呼び出された。誰にも内緒で会って欲しいと。

きっと、愁兄の側から離れるように、邪魔だと言われるんだ。

怖い。でも、これが本当の僕、誰からも好まれる存在ではない。



放課後、僕はこっそり二人の目を盗んで裏庭の校舎裏に行った。

そこに行くのは初めてで少し迷ってしまった。小さな花壇に色とりどりの花が咲きぽつりとベンチが一つ置かれてるだけの寂しい場所。そのベンチに生徒会長は長い脚を組み待っていた。

「すみません。遅れてしまって」

傍に行き遅れたことを深く頭を下げ謝った。

「そんなに、怖がらないでほしい。苛めようとしているわけじゃないんだよ」

にっこりと笑ってくれるが、僕はこの人が怖いわけじゃない。愁兄と別れるのが怖いだけ。

「ごめんなさい。生徒会忙しいのに兄に甘えてごめんなさい。兄は優秀なんです。あなたの事とても信頼してます。だから、もう、......」

まとわりつかないと会わないという言葉が出てこない。

「泣かないで、俺も愁の事、信頼している。君のことも好きだよ」

僕は、自分のことをこんな素敵な人が好きになるはずないと思うから首を横に振った。

「でも、君は.....うん、今日はごめん。えっと友紀君だっけ、これからも愁だけでなく俺とも仲良くしてもらえると嬉しいな」

それでも、僕は泣きながら首を横に振っていた。

すると、ふわりと抱きしめられた。

「ほんとに好きなんだよ。可愛い弟みたいで」

囁かれた言葉に顔をあげるとおでこに口づけされた。びっくりして逃げようとしたけど、僕の体は生徒会長の腕の中、身動き一つできなかった。

僕達の後ろでカサっと落ち葉の踏む音がした。緩まった腕の中で振り向くと、そこには怖い顔をした愁兄がいた。僕が声をかけようとすると視線を逸らし背中を向けてしまう。

「邪魔をした」

それだけを言いその場を離れていく。僕は、嫌われた・・・兄弟としても家族としても・・・もう、僕の天使はいない。

僕は、生徒会長の腕の中で意識を失った。

友紀、そっちにいる?と広海から愁に連絡が入り、急いで教室を飛び出した。裏庭向かっていると校舎裏に向かう友紀を見つけ後を追った。
そして、生徒会長に抱き締められキスをされてる友紀を見てしまった。
俺は何をしているんだ、友紀に背を向け逃げてきてしまった。抑えようのない怒りが湧いてきて、友紀の恐れる暴力を振るいそうになった。校庭の隅のベンチに力無く座り込んでいると、携帯の震えを感じ見ると生徒会長からの着信。
「はい、なんですか?」
『愁、すまない。あんな事するつもりじゃなかったんだ。すまない』
「友紀が嫌がっていないのなら、俺が口を挟む事はしません」
『愁、今俺の腕に友紀君がいるんだが…』
言葉に詰まった会長にそうですか、ではと通話を切ろうとした俺に会長は、助けに来いと叫ばれた。
「会長、どういうことですか?」
『友紀君が急に倒れて意識がないようなんだが』
「すぐ行きます」
それだけ言い通話を切り、走った。

ベンチに横たわる友紀を見た俺には、初めて出会った時の友紀が重なった。
「友紀、目を覚ましていいよ。俺の所に帰って来てくれる」
俺の天使、優しく包むように抱き上げる。
「会長、すみません。連れて帰ります」
あんな柔らかい表情をするのかと生徒会長は、初めて見る愁に、負けを認め、この二人の間に入ろうとした愚かな自分を恥じた。
「愁、すまない。泣く友紀君が可愛くて慰めようとしただけなんだ」
「俺が背を向けたからなので、会長は責任は無いです」
冷たい冷めた目で真っ直ぐ見る愁は、いつもの彼だが、先程の彼を見てしまった会長には、自分は拒否されたのだと悟った。
「そうか、担任には言っておくよ」
「お願いします」
友紀を抱え去っていく愁が見えなくなるまで生徒会長はぼんやりと眺めていた。
タクシーを呼び連れ帰った俺は、友紀のベットにではなく自分のベットに友紀を寝かせた。側にいたい俺の我儘な思いだが、今回はそれを抑えたくなかった。
リビングに戻り、時間を確認した俺は携帯に周からのメールに会長から聞いた旨と荷物は俺たちに任せろとあった。流石だ、俺の相棒。
友紀の側に戻り、傍で勉強を始める。
手元の字がかなり見え辛く、顔を上げると随分と暗くなっているのに気がついた。
そろそろ夕食の支度をするため、友紀の穏やかな寝顔に安堵し、額に軽く口付け部屋を出た。
「愁、友紀は大丈夫か?」
キッチンでは当たり前の様に周と広海がいて、咲良がラグに座り込み宿題をしている。
「愁さん、友紀のカバン部屋に置いときましたから。ごめんなさい、俺が側にいながら」
「広海、ありがとう。お前が悪わけじゃない。俺が友紀に酷い態度を取ったからなんだ、俺こそ迷惑をかけた」
「愁さん、俺、みんなに相談もあって付いてきたんですけど、日を改めます。今日は帰ります」
咲良は俺たちに気を使っているのはわかった。友紀が落ち着いている事を知り、ホッとした顔が嬉しかった。
「咲良も帰っても一人だろ、飯食っていけばいいよ。相談も聞くからゆっくりしろ」
俺は、咲良にも心配かけてすまん。友紀の事を大事思ってくれてありがとうと頭を撫ぜた。
照れたように赤い顔で俯き、お言葉に甘えますと呟いた。
「広海、飯の支度変わるから、お前も宿題をしろ」
俺は、周と久々に二人でキッチンに立った。
「愁、何があった?」
手を動かしながら声を抑え、鋭い視線を向けてくる。
「すまん、俺が友紀に背を向けてしまった」
「お前……」
歯ぎしりがする程の怒りが伝わってくる。お前をいらないと言われ続け育った友紀にとって背を向けるなどそれに等しい行動を俺はとった。
「何故だ!会長と何があった!俺に会いに来た会長は、蒼白な顔だった。お前、友紀の前で会長を殴ったのか?」
「いや、殴りそうになり背を向けてしまった。怒りが抑えられなかった」
愁は自分の未熟さが情けない。
「会長は友紀に何をした?」
その時の事を思い出したのか愁の手に握られていたガラスのコップがキシっと音を立て割れた。
「友紀を抱きしめキスをしていた」