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白と黒の天使  Part 1

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顔を覗き込み囁くように言う声に、僕は体の奥が熱くなる。
最近、愁兄の事を考えると体が熱くなる。抱き締められたいと思ってしまう。こんな気持ち愁兄には知られて嫌われたくない、避けられたくない。
「愁兄ったらすぐ揶揄うんだから」
拗ねたフリをしてゼブラに引っ張られるように小走りになる。

周兄は14階建ての綺麗なマンションの10階角部屋だった。
入り口で部屋番号をプッシュすると周兄の声が聞こえてきた。
「俺だ、開けろ」
自動ドアが開いた。僕はマンションが初めてで目を丸くしていた。
エレベーターが少し苦手で愁兄の腕にしがみついてしまい、笑われてしまったけど離せなかった。

エレベーターが開くとその前に周兄が待っていた。
「友紀、久しぶりだな。やっぱり可愛いな」
僕を腕の中に抱え込もうと腕を伸ばすが、愁兄の腕が僕を抱きしめていた。
「友紀を抱いていいのは俺だけなんだよ。おらおら、触るな」
「なんだよ、ヤキモチか。独占欲丸出しだな、そんなんじゃ嫌われるぞ」
「煩い、お前は広海を抱いてろ」
周兄はニヤリと笑い
「もちろん広海も抱くけど、友紀ともハグしたいじゃん」
駄目だと反論しながら玄関の扉を開け部屋の廊下を愁兄に肩を抱かれながらリビングに入ると
「友紀、遅い。待ちくたびれたよ」
「何で広海がここにいるんだ?」
「一緒に住む準備に決まってるじゃん」
えぇぇ、……えぇぇ、驚き過ぎて声にならない。
「な、な、なんで………」
「立ったままで話してないで座れ。広海、珈琲入れるの手伝え」
は~いと間延びした返事を返しキッチンに。僕は早く話しが聞きたくてカウンターに腰掛け
「どういうこと?広海何にも言ってなかったじゃん。僕に内緒にするなんて酷いよ」
僕がグスグスと涙を零すと
「ごめん、ごめん泣かないでくれ」
「友紀を泣かすな」
「友紀、俺が悪い。広海は悪くないんだ」
三人の声が被さった。
なんだか三人の慌てる様子がおかしく、悪戯したくなった。
「周兄は僕より広海を真っ先に庇うんだ。なるほど……」
周兄はエッと言葉が出てこないし、広海君は真っ赤になってるし、愁兄はニヤニヤ、可笑しくてお腹を抱え笑っているとみんなもつられるように笑顔になる。
「周兄、広海、詳しく話してほしいな」
「ケーキがあるから切るよ、珈琲も冷めちゃったな」
何故か僕の笑顔に二人は息をのみ、広海はアタフタとキッチンに逃げ込んだ。
「友紀、その笑顔怖い、目が笑ってない」
周兄がため息を零す。
ケーキと珈琲がテーブルに並び
「広海、さぁ、話して。僕が広海と別れるの凄く寂しくて辛かったのに」
「ごめん。ホントにあの時は此処に住むなんて考えてなかったんだよ。急な話で親が海外に転勤になって」
「ちょっと待って、今、此処に住むって言った?周兄と同棲するの?」
「友紀、同棲じゃなく同居だって」
「広海も同じ中学ってこと?」
「昨日、編入の手続き済ませた」
「愁兄、知ってたの?」
「今日、広海が来てるのは知っていたが、同棲することも、編入した事も今聞いた」
「だから、同棲じゃなく同居だって、二人して勘弁してくれ」
周兄は、広海が未成年なんだから、何もしないと、でも、同棲って何度も言われてると抑えがきかなくなると、釘をさす。
「周、我慢しろ」
愁兄はニヤニヤしながらも頑張れと言う。
広海は、これ以上赤くならないだろうというぐらい赤い顔になってた。
「広海が一緒なんて嬉しい。また、よろしくね」
広海に抱きつくと
「友紀、広海は俺の。ハグは控えめにしてくれ」
「周、何言ってんだ。いつ俺がお前の物になっただよ、馬鹿なこと言うな」
「えぇぇ、いつってもうキスもしたし、お互い好きだって言ったし、恋人じゃん」
「ば、ば、ば、馬鹿野郎」
言い合いをしている二人が羨ましい。
愁兄は、僕の事…聞きたいけど聞けない。
僕は、大好きと言いたいけど言えない。
好きだと言える二人が羨ましい。


愁兄は、モデルのバイト以外にもレストランのボーイもしてたりで、朝と夜しか顔を合わせられない。叔父さんも中々に忙しい。ドラマの刑事みたいではないが、色々とあるみたいだ。
でも、広海が一緒に行動してくれるから、愁兄のいない時間の寂しさを埋めてくれる。
「広海、ごめんね。いつも付き合わせて」
学校の教材やら色々と用意する物があったりする。
「用意しないといけないのは一緒なんだし、一人より友紀と一緒で俺は楽しいよ。周は、バイトばっかだしつまんねぇし」
「だよね、あの二人バイトばっかし、僕たちが淋しいと思ってるのわかってないんだから」
僕が拗ねていると
「なぁ~、友紀はさ、愁兄のことを好きだよな」
僕がびっくりして目を丸くしてると
「そのなに驚くことか?バレバレじゃん」
「嘘~」
どうしようとおろおろしてる僕を見て大笑いしてる。
「なんで隠すんだ、好きだって言えばいいじゃん」
「駄目だよ、愁兄は僕の事弟みたいに思っているだけだもん。そんな事言ったら一緒にいられない」
こんな僕が家族として愛してもらえるだけでも、奇跡のようなことなのに。僕は母親からも愛されないゴミの様に捨てられたのだから。広海は知らないから、僕が必要とされない、生きようが死のうが母には興味の無いものだったということを。
「友紀、そんな暗い顔をするな。俺は、お前が側にいてくれて、嬉しいと思ってるんだからな」
「ありがとう広海」
少し照れた顔で笑う広海を、可愛いと思う。

入学式、初めての場所、初めての人たち、考えただけで怖い。何故こんな身がすくむのだろう。
「友紀、用意はできたか?」
部屋に呼びに来てくれた愁兄にしがみつくと、そっと抱き返してくれる。暖かい腕の中、恐怖が薄れてくる。
「友紀、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。もう平気」
ドアチャイムが鳴った。
「周達がきたよ、行こう」
リビングに降りて行くと、広海君の後ろから抱きしめてる周兄がいて、固まってしまった。
「周、朝から何やってんだ?」
「何って広海がネクタイ結べないって言うから、よし、これでいい」
なんだ、びっくりした、周兄が広海の首にキスしてる様に見えてしまった。
「紛らわしい事するな、朝から盛ってるのかと思ったんだがな」
「な、な、何、言ってんですか、そんな事するわけないでしょ」
「おぉいいね、してもいいならするけど」
余裕の兄二人の会話に真っ赤に狼狽える僕達お子様二人。
バカバカしい朝の会話に笑い出していた。まだ少し、緊張していたけど楽になった気がする。
「さぁ行くぞ」
僕と広海を挟んで並んで歩く。
周兄は広海の寝癖を直しながら
「高校と中学、同じ敷地内だが結構離れてるから会いに行くの大変だよな」
「会いに来なくていいよ、友紀がいるんだし」
「なんだよ、俺に会いたくないのか?」
「そんな事言ってないだろう、周も忙しいだろうなと思ったからさ」
もごもごと語尾が小さい声になる広海の肩を抱く周兄に、広海が恥ずかしいと逃げる。いつもの仲の良い喧嘩が始まる。