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白と黒の天使  Part 1

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周兄は、ホントに坂下君が気に入ったみたいで、髪をくしゃくしゃにしたり、肩を抱いたりちょっかいを出してる。
坂下君も、やめろとか言いながらも、笑ったり、拗ねたり、まるでじゃれあってるように見える。
お店を出て、僕は愁兄と腕を組んで歩いていた。お別れの時間が近づいて寂しくてたまらないけど、笑顔で見上げる。
「お兄ちゃん、お家に着いたらまた電話してね。1人になったら電車の中で泣いたりしないでよ」
生意気な事を言ってみたりもした。行かないでって言ってしまわないために。
「泣かない自信ないなぁ、泣きそうになったらトイレに飛び込むよ。」
周兄は揶揄うように
「愁は強面の割に涙脆いからなぁ。きっと泣くぞ。友紀の側には俺がいるから泣かないもんなぁ」
「俺だっているから」
広海まで勢い良く言うから、大笑いになった。
今日は、周兄や広海君のお陰で少しだけ寂しいお別れでなくなった。

4人で食事をしてから、周兄は時々部活の帰りとか言って顔を出してくれる。
部活の帰りって、家からも学校からも離れているのに。
そして、周兄の隣りには広海君が必ずいる。もしかして、周兄は広海君に会いに来るついでに僕の所に来てるのかなって思うんだ。
広海君と話してる周兄は、凄い優しい目をしている。
周兄が広海君を揶揄うから、僕が喧嘩になる前に止めに入る。そんな事を繰り返してる間に、広海君とも緊張なく話せるようになっていた。
周兄は、僕たちの頭をよく撫ぜる。優しい瞳と仕草で。

周兄の優しさは、広海君を僕に伝染するように変えたのか、僕たちの間の緊張もわだかまりも消してくれた。
学校が始まり、僕の側に広海君がいるようになった。
周りは、最初はえっ! と遠巻きに眺めていた。
そんな周りに僕は戸惑ったが、広海君の何も気にしない態度は、前と変わらない。
教室は、僕には息苦しく感じていたから、何にも興味を持たないようになっていたけど、関心が向いただけで別の世界になった気がした。
広海君は、クラスの中心で慕われる存在だと気付いた。周兄といるときは、僕と同じ子供扱いだから違う一面が新鮮だった。
「友紀、帰り一緒だから、待っていて」
「うん、周兄来るの?」
「うん、飯一緒にだって。それと友紀に話があるんだと」
「えっ!僕に。改まってなんだろう?広海君は何の話か知ってるの?」
「し、し、知らない」
広海君、嘘が下手。
笑ってしまった僕を、顔を赤くし笑うなと睨んでそっぽを向いた。
きっと周兄は、こんな可愛い広海君が好きなんだろうと思う。

僕と広海君は、周兄の家の最寄りの駅に向かっていた。
「広海君、今日は駅で待ち合わせなの?」
「あ、えっと、その、今日は周兄の家に一度寄ってから……」
しどろもどろの広海君が、可笑しくて
「僕に何か隠してるでしょ。でも、聞かないであげる」
ギクってしたけど、サンキューとぼそりと呟いた。
改札を抜けると周兄がいた。壁に凭れ携帯を触る姿は、かっこいい。
180はある身長、肩にかかるウェーブの栗色の髪、綺麗な二重なんだけど、笑うと少し目尻が下がる優しい目、薄い形のいい唇、程よい高さの鼻、通り過ぎる女性達がチラチラ見ている。
僕達に気づかない周兄を、立ち止まり眺めてしまっていた。
「かっこいいなぁ~」
広海君の心の声が漏れて、僕も
「うん、かっこいいね。愁兄と並ぶと絵になるなぁ~って思ってた」
「うん、愁兄もかっこいいもんな、なんか月と太陽みたいな陽と陰みたいな、動と静みたいな…」
どう言えばいいのか考え込んでしまった広海君に
「広海君は、周兄が好き?」
と聞いていた。
広海君は目を大きく見張ると
「す、す、好きって、と、と、友達としてだと……」
「そうなの?僕は愁兄が好き。周兄も好きだけど、愁兄を好きな気持ちと違う気がする」
「うん、なんとなくわかる」
そんな話をして、二人して俯き赤い顔をしている僕達を携帯から顔を上げた周兄が見つけ駆け寄ってきた。
「どうしたんだ?二人して赤い顔して。広海、友紀に何かしてないだろうな」
「なんだよ、それ。何もしてないに決まってんだろ、馬鹿野郎」
「なんだよ、馬鹿野郎って」
「二人とも止めて、恥ずかしい」
二人してごめんと謝った。
周兄は知らない、僕達が好きな人の事話していたことを、それが自分の事という事も。
「今日は俺の家で飯作って騒ぐ」
ふっと息を吐き周兄は、行くぞと、僕の手を取り、広海君の肩を抱いた。
広海君は益々赤い顔になっていた。
周兄が一人暮らしをしているマンションは、駅から5分ぐらい歩いた所にあった。
14階建ての10階角部屋。
「友紀、鍵開けて入っていて」
周兄が携帯を持って離れる。
「おじゃまします」
誰もいないと思っても言ってしまう言葉。でも、廊下に愁兄が立っていた。
「友紀、おかえり」
僕は、突然過ぎて動けなかった。バイトで遅くなったりで、ずっと声を聞けないでいたから。
「友紀、お誕生日少し遅れたけど、おめでとう。友紀、泣かないで笑って」
「だって会えないと思ってたから、ずっと電話も無かったし、もう僕の事忘れたんだと思った」
「ごめんよ。寂しい思いさせて」
抱き締めてくれる愁兄の腕の中は暖かい。
「エッとそろそろ部屋に行きたいんだが、いいかな」
満足そうに笑う二人、嘘の下手な広海君が隠していた事
「ごめんなさい。嬉しくて。ありがとう」
「友紀が謝ることないさ、今日は友紀が主役だよ」
廊下の奥、リビングの丸いテーブルには沢山の料理が並んでいた。
僕の肩を抱き締めて離さない愁兄に呆れながらも、周兄と広海君はキッチンへ行った。
「友紀、何飲む?」
「広海君と同じでいい」
「俺、カルピスソーダ」
「それでいいよ」
広海君は、キッチンで周兄とバタバタ楽しそうだし、何だか手馴れてる。
「広海、俺と愁にはコーラな」
「了解」
「周兄、冷蔵庫のハムサラダも出す?」
「頼む」
「友紀、取り皿テーブルにある?」
「あるよ」
「愁、友紀をいつまでも抱っこしてないで、お前も手伝え」
「嫌だ。この部屋初めてだし。広海の方が、役にたつだろう。ほぼ毎日来てるみたいだしな」
「愁兄、毎日なんて来てない」
広海君の顔がボッと赤くなる。
「愁、広海を揶揄うな」
僕は、びっくりして只々目を白黒させていた。
やっとみんながテーブルを囲み座った。
「改めて、友紀、お誕生日おめでとう」
乾杯とグラスを合わせた。
「ねぇ、広海君ってここにそんなに来てるの?」
「えっと、時々だよ。毎日なんてホントに来てないからな」
「周兄と何してるの?」
「何って、テレビ見たり、ゲームしたり、ご飯食べたり、勉強したりとか」
「いいな」
「友紀も来ていいよ」
「時々、来てもいい?邪魔はしないから」
愁兄が眉間に皺を寄せたから
駄目なのかなって思ってしまう。
「愁、お前が不機嫌になると怖いから、友紀が不安そうにしてるぞ」
僕は、「駄目かな?」って愁兄を見ると、優しく「いいよ」って言ってくれた。
周兄と広海君から、ニット帽とお揃いのマフラーを貰った。