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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7

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「どうしよう…!」
「静かに。落ち着いて俺の言うこと聞け」
「うん…」

瑞が屈みこんで、自分のスクールバッグからペットボトルを取り出した。

「なにそれ…お水?」
「役に立つかなって、狐の祠の近くで湧水汲んできた」

祠の隣にある、小さな手水場のことだ。瑞は蓋をはずすと、踊り場に座る郁と自身の周りにその水を少しずつ垂らしていく。二人を囲うように、小さな水の円ができる。始点と終点の水がしっかり重なり合ったことを確認してから、瑞は郁に向き直る。

「簡単な結界だよ」
「結界…あ、この前お酒でやってたやつ…?」
「そう。一応狐の加護で清められてる水だから、効果はあると思う」

ぴた、ぴた、と音が近づいてくる。

「向こうからは結界の中の俺達は見えない。でも音は聞こえるから声を出したりするとバレる。声を出すなよ。呼吸は、なるべく細く。できるか?怖かったら目を閉じてろ」
「うん、うん…わかった…」

やるしかないのだ。だけどもしも見つかったらどうなるのだろう。あれはなに?幽霊?妖怪?

「来た」

足音がすぐそばまで迫ったところで、瑞の合図で両手で口をふさぐと同時に目をきつく閉じた。ぴた、ぴた、と、その足音は角を曲がってすぐそばまでやってきた。心臓が早鐘をうち、今にも恐怖で叫びだしそうな郁。その郁をかろうじて押しとどめているのが、隣の瑞の存在だった。密着して触れ合っている腕の熱と、甘い匂い。大丈夫、大丈夫、と自分に言い聞かせる。言われた通り、最小限の呼吸を静かに静かに繰り返す。

ぴた、ぴた、と今まさに、自分たちの前を足音が通り過ぎていく。郁はこのまま目を閉じていればよかったのだ。奇禍が過ぎ去るのを待っていれば。