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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7

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しかし。

人間の好奇心というのは恐ろしいもので、郁は目を開けてしまった。それはもう好奇心というよりも本能だった。見なければ、いま自分を襲っている奇禍の正体を。

「……!!?」

瞬時に目を開けたことを後悔する。壁際の郁を隠すように屈む瑞の背中ごしに、それを見た。

非常灯に照らされたそれは、おそらく女だった。異様に背が高くて、天井に頭をぶつけている。髪だろうか、黒い束が顔や体を覆っていて、表情がわからない。ぼろぼろの黒衣。およそ生きていないであろう、黒ずんだ肌の色。骨が浮いているがりがりの手足。手を幽霊のように体の前にだらりと投げ出して、天井にひっかかる首をぶつけながら歩いている。忌まわしい。生きていない。

「!!!!!」

悲鳴を上げそうになった郁だったが、それは瑞の手によって阻まれる。抑えた両手の上から、瑞が郁の口をふさいだ。声を出すのはセーフだったが、一瞬大きく息を吸い込んだ郁の気配に、女が気づいたようだ。足音が止まり、女の身体がゆっくりこちらを向く。

(どうしよう…!)

息ができない苦しさと恐怖でパニックになる。そんな郁の身体に腕が回され、瑞に自分の胸に押し付けるように抱きしめられる。声を出すな、とそう言われているのだ。はやくいけ、はやくいけ!

目を閉じひたすら耐える。再び足音が聞こえたとき、郁は泣きたくなるほどほっとした。足音が階段を登っていき、完全に聞こえなくなったところで、瑞がようやく腕の力を緩めた。

「大丈夫か?」
「うええええ…!」
「泣かんでも」
「めっちゃこわがっだああああ…なにあのひどおおおお~」

郁は泣きながら階段の上を指す。