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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7

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日が暮れて、完全下校の時間が過ぎた。靴音を響かせることが躊躇われる静寂に、虫の声も届かない。

「伊吹先輩は先行ったよ」
「そっか。颯馬くんも、部活早くあがって、もう向かうってさっきメールきた」

郁は瑞と並んで、静かに階段を登る。今日も部活へは行かなかった。気持ちは不安と焦りが渦巻いたままだが、これでも前に進んでいると思わなくてならない。必要な休みだと思わなくては。郁は自分にそう言い聞かせながら、図書館で沓薙山や四柱様についての書物を読んだ。そこにはいみご様についての記述は見つけられなかったのだが、瑞は手がかりをつかんだようだった。

(祈っちゃいけない祠かあ…)

颯馬に見せられたばらばらにされた人形の手足を思い出す。あんなものを机に入れられたら、郁だって怖くて学校に来られないと思う。怖い。こんなこと、颯馬の言うように終わらせるべきだ。

「一之瀬、とまって」
「え?」

暗闇の中で、小さな瑞の声。

「なに…」
「静かに」

瑞の背中を見つめたまま、郁は一瞬息を止める。呼吸さえもしてはいけないような、そんな緊張した空気を瑞から感じ取ったからだ。会話の途切れた闇からは、なんの音も聞こえない。しかし、小さく空気が振動する感覚がする。風だろうか?何かが動く気配だ。

(誰かいるの?神末先輩?颯馬くん?)

気配がする。階段を登り切った場所。左に曲がれば11組のある廊下だ。壁にさえぎられて廊下の様子は見えない。しかし瑞は、そちらに感覚を集中させているようだった。

「いるな」

音もなく、瑞が一歩踏み出す。そして壁から顔を出し、廊下のほうを覗き見た。

「い、いるって誰が?」
「……」

答えない瑞の背中から、郁もそうっと廊下を覗き込んでみる。