黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7
「ねえ。いーこと教えたげよっか?」
颯馬は笑みを浮かべたまま、男子生徒にそう話しかけた。
「ひとを呪わば穴二つ。あんたさあ、自分の分の墓穴、ちゃんと掘ってあんの?ん?」
もしかして、こいつが…?
男子生徒はうつむいてがたがた震えている。何も答えない。
「はーもう。言いたいことあるなら、呪わないで面と向かって言えばいいのに」
そう言って笑ったかと思うと。
ダンッ!!!
颯馬は足を振り上げると、男子生徒の顔のすぐ横の壁に、上靴のの底をめり込ませる。ものすごい迫力だった。鼻が触れようかという至近距離まで顔を近づけた颯馬の目が、ぎょろりと剥かれる。顔にはいつもの笑みが張り付いているが、その目には殺意にも似た凶器のような鋭さが宿っていた。
「せーぜー気を付ければ?これからあんたに起きる小さな怪我も、些細な不幸も、全部全部呪い返しだからさ。死ぬまでずっと」
いこ、と颯馬はもう興味を失くしたように、瑞を促して教室を出た。廊下を歩きながら、機嫌よく鼻歌を歌う颯馬を瑞は追う。
「はー、いらん労力使った」
「…おまえって怒らせると怖いのな。犯人には興味ないとか言ってたくせに」
「食堂いこー」
「はいはい」
付き合うか。
作品名:黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7 作家名:ひなた眞白