黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7
「つっかれたあ」
瑞がのびをして、欠伸を噛み殺している。教室の時計を見れば九時を回っている。もう帰らなくては。
「管理棟の裏口からこっそり出るぞ、浅田さんが待ってくれてるから」
「ラジャー!」
伊吹がみんなを先導しようと扉に向かった時。
「みんな、付き合ってくれてありがとう」
そう言って、颯馬が頭を下げた。
「お礼は、また改めてさせて」
らしくないね、と郁は笑った。みんな疲れているけれど、充実した表情だった。
「それで郁ちゃん、俺と神末先輩と合流するまで、瑞くんと二人で何してたの?」
「だだだだからそれは!!」
「おい、なんの話だ」
「神末先輩~、なんか~校内でエッチなことしてたらしいんですよこの二人~」
「ハアアァ!?!?」
「ごごご誤解ですって!!ちょっと落ち着いて!!その石おろして伊吹先輩!!」
秋の風がゆっくりと季節を運ぶ気配の中を、誰もが軽やかな気持ちで校舎を後にする。
.
作品名:黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7 作家名:ひなた眞白