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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7

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(…どうなった)

覚悟を決めて目を開けた伊吹を、女が見下ろしていた。真上。いつから、ここに。

天井にまで届く長身。頭が横に曲がっている。ばさばさの髪が伊吹の頬をかすめていた。

「……」

どす黒い顔には、目も鼻も口もない。ぽっかりと黒い穴があいている。目がないのに、女が自分を見ていることが、伊吹にはわかった。女が腰を屈め、顔を近づけてくる。

ウ  ラ   ヤ マ シイ    ナア……

声が聞こえる。細い細い、かすれるように小さな声。夜のように真っ黒な闇が、伊吹の顔を覗き込んでくる。

アンナ フウニ ナレ タラ イイ  ナア……

枯れ木のような、殆ど骨と皮だけの10本の指が、伊吹の頬を包むように覆う。真っ黒い、どすぐろい、その顔。見られた。気づかれた。自分の中のどす黒い感情に。

「…見るな、覗くな…」

せり上がってくる心臓の鼓動が痛い。伊吹は震える声で言う。

イ ナ クナ レバ イイ ノニナア……

「そんなこと思ってない!!」

伊吹は絶叫する。瑞は大事な後輩だ。どれだけ実力の差があっても、どれだけ生まれ持った資質が違っても。いなくなればいいなんて。そんなこと。そんなこと。