黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7
「このまま走り続けるなんて無理だし…校内がめちゃくちゃな中で探しまわるなんて」
昨日だって見つからなかったのだ。
「こういう状況でしか見つけられないとか、ありうると思いません?」
「んんんん~…」
どうだろう。
伊吹は振り返る。足音はやけにはっきりと聞こえる。闇の中から、こちらを確実に補足しているのだ。
(いるんだ…)
廊下を駆け抜け、西側の階段に辿り着く。
「上かな下かなあ。闇雲に走ってても駄目ですよね。祠の場所を見つけないと…」
「もうそこまで来てるぞ!」
「一旦隠れましょう」
そう言うと、颯馬は階段を駆け上がった。伊吹もあとに続く。すぐ後ろから階段を登る裸足の音がして、追いつかれているという恐怖に襲われる。
「やばい、先輩こっち!」
伊吹の腕を引っ張り、颯馬が駆け込んだのは3年11組と表記のある教室だった。
窓際まで走り、机の陰に身を屈める。寒くて真っ暗だ。
「そのまま行ってくれよ」
隣の颯馬の呟きを、息を整えながら聞く。
作品名:黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7 作家名:ひなた眞白