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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 前編 探偵奇談7

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放課後の弓道場で、部員たちが稽古に励んでいる。秋が少しずつ深まっていくこの頃。弓道場から見える沓薙山は、赤や黄色といった色が鮮やかになっていた。木々の色が変わりゆくことで、季節が確実に移り変わっていくことを知る。

三年生が引退してから、部内では緊張感が高まったように思う。レギュラーチーム入りを目指す一年生と、一年生に負けじと闘志を燃やす二年生。心と技術を磨くため、誰もが自分に厳しい課題を課している。

郁(いく)も他の部員らと同じように弓を引いているのだが。

(まただ…)

いつもと違う自分の射に戸惑う。リズムが狂っている。おや、と感じる違和。その正体を知るために、もう一本矢を番える。打ち起こし、引き分ける。

(…また!なんで!?)

引き分けた直後に、矢が放たれた。なぜ?まだ離すタイミングではないのに。もう一度、と焦る自分を抑えながら弓を引く郁だったが。

「いたっ…」

矢がまた勝手に離れ、弦が頬を強く打った。熱い痛みに茫然とする。残心も忘れ、立ち尽くす郁に、そばで見ていた友人が声をかけてきた。

「郁、ほっぺ冷やさないと。赤くなってる」
「うん…」

触れると、みみずばれの様に皮膚が縦にまっすぐ盛り上がっているのがわかった。

「保冷剤もってきてあげるから、待ってて」
「ありがとう、ごめんね」

空いていたパイプ椅子に腰を下ろし、郁は不安でいっぱいだった。

(いつもみたいに弓が引けない…なんで?)

どうして、と頭が軽くパニックだ。

「一之瀬、大丈夫か?おまえの今の立ち…」

主将の伊吹がそばにやってくる。郁の後ろで弓を引いていた。異変に気付いて出てきてくれたようだ。