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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 前編 探偵奇談7

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「……」

ああ、また夢か。暗い部屋で目を覚ます。ひやりとした肌寒さを感じ、瑞は夜の中で布団を引き寄せた。

(…なんか登場人物が増えたなあ)

沓薙山で伊吹とともに異世界のようなところへ迷い込んで以来、不可思議な夢はさらに鮮明になった。

(あのおじーちゃん、誰なんだろう)

眠る前に、毎晩反芻する。裏山で出会ったあの老人の顔を、忘れないように繰り返し思い描く。

どうやら自分は(というか自分の魂は?)、定められた運命を変えてやろうと躍起になって繰り返し生まれようとしているらしい。いつかの時代のどこかの自分が、伊吹との別れを受け入れられずにいた。その別れを受け入れないことが、沓薙山の神様が言うところの「天命を歪める」という行為らしく、幾度となく「やり直し」を繰り返す瑞は監視されているらしいのだった。なぜ瑞にそんな力があるのかは知らない。

(先輩の名づけの話…)

伊吹が話してくれたあの話。伊吹の曾祖父に、伊吹という自分が名づけた子どもを探していると語ったという男の話。瑞は覚えていないのだけれど、いつかの夜に伊吹の名前は自分がつけたのだと、そう語ったことがあったらしい。

(これが全部全部ほんとのことなら、どうして俺は別れを望んだんだ?)

夢の中でも、異世界の沓薙山でも、みなが口をそろえて言うのだ。

「おまえが望んだから」と。

それほどまでに別れがたく、魂がその運命を受け入れることもできないくらい大切だったひととの別れを、なぜ自分が望んだのか。瑞にはまったく理解できない。

(わかんねえ…)

こんなにも。
伊吹に執着しているのに。








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