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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 前編 探偵奇談7

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「ねー委員長、来月の学校祭、クラスの出し物はメイド喫茶がいいなあって思てるんだけど」
「そういうのみんな好きじゃないと思うから…学校祭は研究発表か展示じゃないかな」
「ツマンナイネ」

机に顎をくっつけてぶーたれていた颯馬は、机の中に手を突っ込み、その異物を探り当てる。
今日もあった。呪われているぞ、というくだらない脅し。

(今日は首?)

リカちゃん人形の首が入っていた。恐怖とか驚きは一ミリもない。ただただ不愉快だった。

「どうしたの、天谷くん」
「何でもないよ」

スマイルで、気取られそうになった表情の変化をはぐらかす。委員長には言えない。人形の首が机に入ってたなんて。

それ以上に。

いま教室の入り口に、異様なものが立っているなんて、もっと言えない。
黒い、ぼろぼろの布きれをまとう、微動だにしない人物が、こちらを凝視するように立っているなんて。

(来たのか)

颯馬は視界の隅にそれを捉えて観察する。決して直接しげしげと眺めないよう。

ぼさぼさの髪が長いから、きっと女だろう。身長が異様に高い。高すぎて、天井あたりで首をまげて頭が逆さまになっている。顔は見えない。髪に隠れて。忌まわしい無機物のように、それは音もなく教室を、おそらく颯馬を見ているのだった。長い腕はだらりとぶらさがっていて、枯れ木のようにガリガリだった。肌の色は土気色。生きている人間には見えない。それは微動だにせず立っている。他の生徒は、誰も気づいていないようだった。

笹山が言っていたのはこれだろう。学校にいても、夜眠っても、つきまとってくるという。しかし颯馬は知らないふりを決め込む。あんなもの、おそるるに足りないからだ。