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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 前編 探偵奇談7

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黒まとう悪意



今日は雨だ。めんどくさい。朝の玄関で傘を畳み、天谷颯馬はため息をついた。雨だと言うだけで、テンションというのは結構下がるものなのだ。ましてや自分の身に不愉快な出来事が起きている真っ最中なら、なおのこと。
教室に向かう間、他のクラスの友人らと他愛のない会話を交わす。自分の身に降りかかった災難について、颯馬は誰にも話していない。瑞と、その愉快な仲間たち以外には。

「じゃーなー」
「はいはーい」

友人らと別れて自分の教室に一歩入ると、淀んだような空気が漂っていた。机にかじりついて本を読む者、予習なのか参考書に目を走らせるもの。漫画を読んだり、会話をしている生徒はいない。静かだ。まじめだ。颯馬は苦虫をつぶしたように口を尖らせた。

「ねー委員長、いつもにましてわがクラスは陰気臭いね」

前の席に座る、ショートヘアにメガネの女生徒に声をかける。学級委員の彼女は、特進クラスでは異色の存在である颯馬にも良心的に接してくれる、数少ないクラスメイトだった。

「今日はほら、英語の小テストがあるからだよ」
「そんなんあったっけ?」
「あったよ。忘れてたの?まあ天谷くんなら、大丈夫か」
「委員長、コンタクトにしたら絶対かわいいのに」
「話きいてる?」

なるほど、小テストか。心底どうでもいい。生徒に競わせることは学力の向上につながるだろうが、相手を蹴落とすことに必死になるあまあり、まともだった心が疲弊して死んでいく事実を学校や教師はなんとも思わないのだろうか。