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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 前編 探偵奇談7

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ぞっとする。それは、確かに「呪い」が作用していると感じたからだ。
祟られている、呪われている、誰かが自分を嫌っていて、明確にその思いを示してくる…。その事実だけで、周囲のすべてを信じられなくなるだろう。心を病む。

「嫌がらせが重なって不登校になったということか?それともその『いみご様』とかいう神様の祟りとかいうのが、実際にあったのか?」

伊吹は尋ねた。不可思議な力が働いたとは考えにくい。自分は誰かに嫌がらせをされている、その気持ちがストレスとなり、不登校に陥る。それだけならば、神様の祟りとは言えない。

「笹山くんが言うには、授業中、教室の隅に黒い影が見えたり、夢の中に真っ黒い服を着た女が出てきたりしたって。それが本当かはわかりません。疲れた心が見せた幻かもしれないですからね。だけど、笹山くんが祟られてるっていうのは、もっとわかりやすい形で見えるようになったんです」

颯馬が声を潜める。

「『いみご様』が誰かを祟っているとき、身体のどこかにシルシが出るんですって。ほくろが増える、シミができる、覚えのない場所に傷ができる…などなど。笹山くんは、あざができてた。ちょっと異常なあざ。右頬から目にかけての辺りに、こうグルって紫の。殴られても、こんな大きいのできないでしょっていう位の。よくみると、人の顔みたいに斑だった」

不気味なイメージが頭にわき、伊吹は返事をするタイミングを逸した。

「…颯馬にも出たのか?その印っていうの」

伊吹と郁が息を呑む中、瑞が冷静な声で問う。

「え~?見たいの~?」

颯馬はなぜか妖しく笑うと、制服の下に着ていた派手なプリントのTシャツをたくしあげた。
暗がりにも、はっきりとわかる。左胸、心臓のあたりだ。紫っぽく黒ずんだあざのようなものが見える。それは誰の目にも明らかに、人間の手のひらの形をしたあざだった。誰かが心臓を圧迫している、そんなイメージが浮かび、伊吹は背筋が寒くなる。殺意に近い黒々としたものを感じさせた。

「いつの間にかできてたの。ぶつけた記憶も痛みもなし。やばくない?この前女子にヒカレちゃったんだよね。せっかくいい雰囲気だったのに」

…どういう状況でヒカレちゃったのか想像して、伊吹はせき込んだ。