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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 前編 探偵奇談7

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「成績をあげたければ、ライバルを蹴落としたければ、いみご様にお願いするのが一番効果的らしい。祠に通い、祈りを捧げる」

嫌な話だ、と伊吹は思う。丑の刻参りと同じではないか。

「いみご様に祟られたものは…ほい」

颯馬が机から何かを取り出した。暗がりによく見えない。颯馬がスマートフォンを操作し、手のひらのそれを照らした瞬間、郁が短く悲鳴をあげる。伊吹もまた、息を呑んでそれを見つめた。

「…なんだこれ…」

颯馬の手のひらには、小さな足や腕が乗っている。ビニール製らしい。

「リカちゃん人形の手とか足とか、ちぎったみたいでしょ。これがね、毎朝入れられてる。増えてくの。おまえを憎んでるぞ、呪ってるやつがいるんだぞっていうサインみたい」

悪質ないじめのような気持ち悪さだ。以前在籍していた生徒の中には、虫の死骸や、小動物の骨、抜かれた歯、髪の毛なんかが入れられたこともあるらしい。
言い伝えでは、生き物や人間の身体、もしくはそれらを模したものの一部を少しずつ入れていくことで、「おまえを呪っている」ということを伝えるという寸法のようだと、颯馬が言う。

「気持ち悪い…」

郁が目を逸らしたまま震える声で零す。これではやられたほうは、精神的に追い詰められるだろう。悪意に満ちている。

「いまは天谷がターゲットにされてるってことか?」
「颯馬でいいよ、瑞くん。そうみたい。まー俺も、夏季の校内模試でけっこーいい成績とったしなあ。女の子にももてちゃうし。誰かのヒンシュク買っちゃったみたい」

彼は全く堪えていないようで、あっけらかんと言い放つ。怖いとか、他人から恨まれているとか、そんなことは意に介していない様子で快活に笑うのだった。

「うちのクラスって、結構ギスギスしてんのね。成績がすべてみたいなやつ多くて。俺みたいに運動部入ってんのに成績いいとさ、妬まれちゃう。女の子と遊んでばっかの癖に成績いいなんて死ねよ、とか思われちゃうわけ」

聞けば颯馬は陸上部だという。短距離選手らしい。見えない、と一同が声をそろえると、これでもまじめにやってんだよーとへらへら笑う。