黒闇抱いて夜をゆく 前編 探偵奇談7
「もっとあるでしょ?」
「えっと…」
颯馬がにやっと笑った。
「幽霊が見える、は?」
「!」
なんで知っているのだろう。そんな噂は聞かないが、瑞の不思議な力に触れた生徒はいるから、もしかしたら囁かれているのかもしれない。
「俺さー、そっち方面で相談したいことあるんだよね」
とにかく会わせてほしいという。以前瑞の噂を聞いて怪奇現象の調査を願い出た先輩がいたが、彼女は心底救いを求めていた。颯馬からはそのような危機感は伝わってこないのだが、いったい何を話すつもりなのだろう。
そのことについて颯馬は多くを語らなかった。だから、とりとめのない雑談をして時を過ごした。日が落ちて部活終了時刻になるころ、郁は帰り支度を整えて、颯馬とともに弓道場に向かうことにする。
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作品名:黒闇抱いて夜をゆく 前編 探偵奇談7 作家名:ひなた眞白