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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 前編 探偵奇談7

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放課後。クラスメイト達が次々と部活動へと赴くのを、郁は自分の席に座ったまま眺めていた。

「じゃあ郁、またね」
「うん、部活頑張ってね」

親友の美波もまた、体育館へ向かう。が、振りむいて少し心配そうに声をかけてきた。

「部活終わったら、一緒に帰ろっか?」
「いいよいいよ、毎晩自主練してるんでしょ?あたしなら大丈夫だよ。ありがとう」
「…そ?じゃあ、また明日ね。気を付けて帰るんだよ」

頷いて手を振る。スランプのことを気遣ってくれている美波の気持ちが嬉しかった。同時に、気を遣わせてしまって申し訳ないとも思う。

放課後を弓道場以外で過ごすのは久しぶりだ。殆どのクラスメイトが部活に入っているから、教室には郁だけだ。

窓の外にうっすらと夕焼けがかった空と、その下に広がる街並みが見えた。もう帰ろうか。それともどこかに寄っていこうか…。

(…なんかそんな気分じゃないなあ)

郁は鞄から瑞に借りたiPodを取り出した。耳にイヤホンを突っ込んで再生する。先の見えない不安から、聴こえてくる音楽が遠ざけてくれるようで、心がゆっくりと鎮まっていく。

(きれいなオレンジ色)

窓の外の美しい空に、郁はぼんやりと見惚れる。イヤホンからは、瑞が好きだというロックバンドのバラードが流れていた。

瑞のことを考える。今頃的前で弓を引いている好きなひとのことを。