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覇王伝__蒼剣の舞い4 【第一部完】

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第15話 いざ旅立たん


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 北領___彼の記憶にあるのは、万年雪を抱く峰々と広い平原。王都のような豪華さはないが、四国最大の土地。
 そして、前覇王が統一後王都を築き、覇王家が生まれた土地。
 近道は、臥龍山越えだが。
 「聖域が、そう二度も迎えてくれぬ」
 「もしかして、またこれ?」
 幽霊の真似事をする焔に、拓海がゴックンと唾を呑む。
 そんな拓海の前で、南方七星士『星宿』が一鳴き。
 「拓海、オバケ怖イ」
 「あ、そうなんだ」
 「焔さまっ、納得しないでくださいっ。違います!」
 しかしこの弁明はかえって、拓海はオバケが苦手と印象づけた。
 肩を落とし、まだまだだなと溜息をつく父・狼靖と、面白そうにニコニコしている焔、一見和やかないつもの光景。
 奥の部屋を除いては。
 「____今、何と?」
 「頼めるのはお前しかいないと思ってな」
 「冗談にしてはきついですね」
 「___冗談じゃねぇよ。俺が、冗談など云う性格じゃないのは知ってるだろ、星宿」 「断る事は…」
 「お前はやるさ。いつだって俺の暴走を抑えていたじゃねぇか」
 薄暗い部屋の中、星宿は握る拳に力を込めた。いつも冷静な彼が、心を揺らすなど殆どない事だ。部屋が薄暗いお陰で、その変化を知られない事が星宿にはありがたかった。
 清雅は、勘がいい。七年彼と行動を共にし、お互いをよく知っている。
 「それは、あくまで最期の手段ですよね?」
 「あぁ」
 「清雅さま、星宿さま、お茶にしませんか?」
 拓海の明るい声が聞こえてくる。
 「___星宿、あいつらには絶対云うなよ」
 「…はい」
 扉が閉まるのと同時に、清雅はがくりと机に手をついた。
 背を隠す髪がバサッと表情を隠し、背の龍が蒼く光る。
 「…っ、そんなに慌てるなよ…。これからだぜ…」
 荒い息をしながら、清雅は歯を食いしばった。