覇王伝__蒼剣の舞い4 【第一部完】
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蒼国郊外、一人の青年が王都を目指していた。
銀髪に蒼い眸、西域特有の容姿である。
「妙だな、西領の人間など」
「井宿?」
「まさかと思うが」
木の上にいた井宿、翼宿は青年の前に飛び降りた。
「…何か、吾に…?」
「あんた、西の人間だな。それもかなりの身分だ」
「どうして…」
「その髪と目の色、西領貴族のものだからな。同じ特徴をした人間を、俺は知ってる」
「怪しい者ではありませんっ。星宿さまにお会いしたくて」
「星宿…?うちの星宿に、か?」
殺気は感じられず、しかもその名に二人の警戒は解かれた。
「いらっしゃるんですか?」
「いることはいるが…?もともに会話できんぞ」
「どこかお悪いのですか?」
「いや……」
何と答えればいいのだろう。
「しかし、よく俺たちが蒼国にいるって理解ったな」
「それはもう、有名ですから」
「あれが……ねぇ」
赤い鳥を頭に浮かべ、二人は妙な顔になった。
第一、どうやって西領貴族と知り合ったのか。鳥なのに。
「四獣聖の白虎と云えば、有名でしょう」
「はい?」
青年が尋ねようとしていたのは、人間の方だった。
名を天狼、星宿を兄のように慕う青年である。
「どうりで変だと思ったぜ」
「うーん、改名した方がいいんじゃない?」
「グァ!」
『星宿』は、翼宿の問いに嫌だと鳴いた。
その星宿は、久しぶりに会う彼に少し戸惑っていた。
星宿が父の後を継ぎ白虎となり、それから蒼国へ向かってから八年経っている。
故郷はすっかり白碧となり、王都以外砂漠化が進んだと云う。
「昔は、蒼国のように緑多き国だったんですが…」
「天狼…」
「星宿さま、父が黒抄に連れ去られました」
「なに…」
「お願いです。父を助けてください」
天狼の悲痛な訴えに、星宿の表情は厳しいものになっていく。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い4 【第一部完】 作家名:斑鳩青藍