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覇王伝__蒼剣の舞い4 【第一部完】

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 「拓海〜、元気してたぁ♪」
 どうしてこうも、こういう人間に懐かれるのだろう。
 げんなりとしながら、拓海は何とか笑顔をつくる。
 「ええ、何とか…鬼宿さま」
 「その“さま”というのはナシ。格は拓海の下だし」
 「そんな事ないですよ」
 謙遜しながらも、鬼宿の言葉はため口である。南方七星士と云えば、本来朱雀の下につく七人である。
 「朱雀ヨリ偉イ」
 「え…」
 「ほ、と、ほ、り〜っ!」
 いきなり炎が拓海に向かってくる。
 「焔さま、いきなり何するんですか!?」
 「タクちゃん、今日の朝食はそいつだ!!」
 「グァ!」
 赤い鳥が、拓海の肩で鳴く。名を星宿。白虎の星宿と同じ名前であり、鳥にして南方七星である。
 「やめてください。可哀想ですよ」
 「僕は可哀想じゃないわけ?いつか本当に焼き鳥にしてやる」
 「拓海〜、彼本当に朱雀?」
 「…ええ…」
 「拓海、正直」
 『星宿』が、面白そうに鳴く。引きつる笑顔ににじみ出る躊躇いは、『星宿』にも理解るようだ。
 だが、南方七星が見方につけば心強いものはない。
 心宿の存在は気になるが、悔やんでいる暇はない。
 「朝食、一緒にいかがですか?」
 「そのつもりで来たんだ♪」
 「こら鬼宿、タクちゃんにくっつくなぁ!」
 南国の陽気な声に包まれて、彼らは城の中へ消えていく。
 「ふふ…」
 城壁で、男が笑む。
 碧色の双眸と、鱗のような瑠璃色の鎧、その手に白銀の剣。
 「心宿さま」
 「お前の働き、見せてもらうぞ。奴らがもっている二つの珠を奪え」
 「はい、お任せを」
 銀色の髪がハラリと、男の顔を隠す。
 そして、黒抄では___、
 「久しぶりだな?と云っても、お前は答えられぬか?」
 卵形の容器の中で、一人の女性が眠っている。赤い液体が注がれ、躯を繋ぐ幾つもの細い管。
 「吾の心に背いたお前たが、こうして吾の元で生きられる。永遠にな」
 黒王・黒狼は、クククと笑った。