覇王伝__蒼剣の舞い4 【第一部完】
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それは、清雅が完全にドラゴンに支配される事を意味する。
心も躯もドラゴンとなって、四国の厄と生まれ変わって。
「そんな…」
「白王さまが、心宿を利用しているのは…」
「ドラゴンの本来の意思を消し去る為だ。奴は、誤った方向にドラゴンを目覚めさせるつもりだ。遺産を手に入れるために」
「間違ってます、そんなの!白王のしている事は間違ってます。覇王になりたいからって…そんな…」
「ドラゴンを魔物にしない方法は、我々の手でドラゴン七星を集める事だ」
「その前に、こいつが暴走しなければな」
「貴方を殺させませんよ、清雅さま。彼らに蒼剣の力は渡してはなりません」
「軽く云ってくれる。鍵は向こうにあるんだぜ」
躯と共に、二つに分かれたドラゴンの心。一つは心宿として、一つは蒼剣に。
邪気を注がれた珠は、過去の記憶がない。それでも二つは強く引かれ合う。
清雅が自制できなくなる日はやってくるだろう。
「白王さまは、気付いてますね」
「___?」
「貴方が、ドラゴンの転生だと。天狼星に何故拘ったのか理解りました」
「覇王たる心臓に秘めたり…」
拓海が、震える口調で星宿の言葉を繋いだ。
「ちょっと、益々こっちが不利じゃない?」
「焔、お前四獣聖だろう」
「まぁね」
焔は、ペロッと舌を出して剣を抜いた。
星宿の剣に重ね、拓海も剣を重ねる。それは、四獣聖の誓いの形。
そして、清雅の龍王剣が最後に重なる。
「我ら、四国の為に」
「我ら覇王の為に」
「我ら民の為に、共に戦わん」
迷っている暇も、嘆いている余裕もない。
「行きましょう。先ずは黒抄へ。覇王陛下」
星宿、焔、拓海、狼靖が一斉に膝を突く。
「ふん、四獣聖は馬鹿どもの集まりだな」
髪を掻き上げ、清雅が笑う。
そう、迷ってはいられない。ドラゴンが暴走すれば最早止められない。四国は永遠に揺れ動く。その前に、残り五個集めなければならない。
そんな蒼国国境を、男がよろめきながら歩を進めている。
「おい、あんた大丈夫か?」
「…っているのか?」
「はぁ?」
「珠を…」
「おい!?」
メキメキとした何かが裂ける音。
「寄こ、せ…」
「ひぃっ…!!」
男の絶叫が響き渡る。
そこには、魔物と化した男がいた。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い4 【第一部完】 作家名:斑鳩青藍