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覇王伝__蒼剣の舞い4 【第一部完】

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 ___…ロセ。殺セ、四国ヲ喰ラウ前二…。
 闇の中、誰かが訴えてくる。
 ___拓海。
 「清雅…さま?」
 腰まである髪を靡かせ、振り向かぬ男の背に拓海は声をかけた。
 「…誰だ?」
 「え…」
 「お前は誰だ?」
 金色の眸を向け、彼は云う。
 「清雅…さま…」
 肩に置かれる手は、人の物ではなく鱗に覆われた別のもの。
 「さぁ、殺せ」
 ドラゴンに変身していく清雅。
 「うわぁぁぁっ!!」
 絶叫と共に、拓海は目が覚めた。何と云う悪夢なのか。
 いや、これはいつかは正夢になる。清雅の中のドラゴンは、このままでは単なる魔物として目覚める。
 ___嫌だ。
 もうあの顔を見れなくなる。あの乱暴な口調も二度と。
 人間ではなくなるなど、そんな事はあってはならない。
 拓海は、寝台から降り外に出た。
 空は、いつもと変わりなく満天の星が覆い尽くす。その下に、“彼”はいた。
 「せい…」
 拓海が声を掛ける前に、彼に近づく気配に拓海は思わず隠れた。
 「清雅さま」
 「またいつ、ここで星を眺められるか理解らねぇからな」
 「帰ってくればまた見られますよ」
 「そうだな」
 「清雅さま、吾はここに残る事にします」
 「___狼靖」
 「ここで、お帰りをお待ちしております。陛下」
 「何となく、あんたはそういうだろうと思ってた」
 「吾は、もう玄武ではありません。ですが、剣を封印はしません。一武人に戻るだけです。それにここには、昔の仲間、央軌どのもおります」
 「俺は、昔には戻れそうもなくなったな」
 自嘲気味の笑みを浮かべ、清雅は髪を掻き上げる。
 以前は、自由になりたいと思っていたが、いつしか四国が荒れるのを放っておけなくなった。四国を護りたい、いつか芽生えた感情に清雅自身が驚き、それを受け入れた。これが自分の運命なのだと。
 昔は一人だったが、彼には仲間が出来た。慕ってくれる人間もできた。もう自分一人の問題ではない。彼らが笑って暮らせる日を取り戻すため、彼は覇王を目指す。
 「貴方はやはり、前覇王陛下の御子です」
 そう云って顔を上げようとした狼靖の視界が暗くなる。
 「あんたに初めて会った時、親父かと思った。未だ10歳の子供だったが、俺はあの時そう思った。叔父と甥だが、今でも俺にとってはあんたは父親だ」