覇王伝__蒼剣の舞い4 【第一部完】
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「駄目ですっ」
拓海は、思わず二人の間に入った。
「星宿さま、どうして…」
「清雅さまの頼みなのだ」
「嘘です。ね、清雅さま」
振り返る先に、いつもの清雅はいない。金色の眸で彼らを睨み、殺気を漂わしている。 「拓海、よけろ。今の清雅さまは別人だ」
「清雅さま、どうしちゃったんです?」
「拓海っ」
振りかざす蒼剣がピタリと、止まる。
「…たく…み…」
「はい、清雅さま」
「…くそ…っ!」
「清雅さまっ!!」
清雅は再び蒼剣を振り上げ、そのまま振り下ろした。
ポタポタと血が滴り、床に血だまりを作る。
蒼剣は、清雅の右腕を深紅に染めていた。
「清雅さま…」
「…ふん、何て顔してる…。俺は死んじゃいねぇぞ…」
いつもの彼。
泣かないと決めたのに、拓海は清雅の胸に飛び込んでいた。
「清雅さま」
「星宿、今回はお前に世話にならずにすんだな」
「清雅さまを止められるのは吾ではなく、拓海かも知れません…」
「おい拓海、痛ぇだろうが!俺は怪我人だぜ」
思いっきり抱きつかれ、傷口を締め付けられた清雅がきれる。これもいつもの彼。
だが、清雅の中にいるそれはいつ暴走してもおかしくない状態にいた。
『いざとなったら、俺ごと殺せ。天龍が化けモンにならねぇうちにな。必ずだぞ』
星宿に放った清雅の言葉は、未だ生き続ける。
彼の中のドラゴンは、目覚めつつある。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い4 【第一部完】 作家名:斑鳩青藍