永遠の遠距離恋愛2
その夜、彼はペペロンチーノを作ってくれた。
小さなテーブルには他に魚介類のニンニクオリーブを使った炒めもの、二人で食べるようにてんこ盛りになったサラダ、焼いたオイルサーディンにそしてワインにチーズ。
なるほどどこかのレストランだ。悔しいけれど合格点をあげるしかない。
彼の得意料理だと言うけど、絶対これは初めての料理じゃない。手際が良すぎる。
前の彼女にも・・という邪念が湧くが、それもスパイスということにしてあげよう。
二人だけの部屋でテレビを見ながら、笑い語り毒づき長く仲のいい夫婦のようなことをすんなりやれる。
それはお互い、今までに結婚もしてたし、いろんなパートナーと恋愛もして、相手を気遣うことの大切さの蓄積を持っているからだろう。
失くしたものの大切さは、失くしてから徐々に分かる。だから私は・・彼も多分、今いるこの二人の時間を愛しく思うのだろう。ずっと相方を想いやり続けていれば多分、離婚もなかっただろうし、今、目の前の彼もいない。人生の分かれ道のチョイスは幾つかに枝分かれして、ここに至るのである。
ほのかな幸せ・・・小さく灯ったろうそくの炎のような二人の温もり。長い間、遠距離恋愛を止めなかったご褒美かもしれない。
その夜、後片付けもそこそこにソファーと食べ残したお皿が残るテーブルの間で、もつれるように私達は抱き合った。もう、幾度目かの交わりだけどホテルや旅館と違う、ここが普通の家だからであろう。似ているといえば過ぎ去った過去の新婚時代か・・・私と彼は昔のような甘ったるいセックスをした。
それからベッドに二人這い上がったのは午前0時を過ぎた深夜だった。彼の腕枕で眠った。
朝の目覚めは奇妙だった。見慣れぬ他人の部屋だからだろう。ホテルとは違い生活感があるものだから、長年ここに住んでて寝ていたのかもと錯覚する。そして、横には彼。いつもの日常のようであり、そうじゃない。もしかしたら、これが私の当たり前の生活で、思い出せない過去は記憶喪失にでもなったのだろうかと思うくらいしっくり来たのだ。
上半身裸の彼の寝息は昔から耳に馴染んだサウンドのようであり、外からの小鳥のさえずりも、いつもの日常風景のように聞こえる。
いつの間にか遠慮してベッドの隅に寝ていた私は、彼のそばに寄り右手を胸に這わせた。温もりと人肌特有の手触り。この間も彼にこのように触ったはずなのに思い出せない。遠距離恋愛は毎度のことながら新鮮でドキドキものである。
私は寝ている彼の股間に手を持って行き、彼のを確かめた。昨晩ほど固くないがそれはそれで愛しい。
「なんだ、足りなかったのか?」彼はおはようの挨拶のように言った。
こっそりしたつもりだがバレていた。思わず手を引っ込めようとすると彼は素早く私の手首を捕まえ
「そのまま、そのまま」と言った。思わず二人笑いが出た。これが朝の本当の幸せなんだろう。
「グニョグニョしてるわ・・・あら、固くなってきた」
「誰かが触るからだよ」
「すぐに元気になるのね」
「まだ若いだろ」
私はその質問のような自慢話に答えず、潜り込んで彼のを咥えた。
「うっ、朝から過激だなっ!」
固くなった彼のは更に大きくなった。そして彼には悪いと思ったけど
「はい、おしまいっ」と言ってベッドから這い出た。
「なんだよ~、意地悪だな~」情けない声を出す彼が少年のようだ。
「今夜もあるから、大事にとっといて」そう言うと私は冷蔵庫の中からオレンジジュースを取り出した。そしてグラスに注ぎ一気に飲んだ。なんだか今日もまた楽しい一日が迎えられそうだ。