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海野ごはん
海野ごはん
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永遠の遠距離恋愛2

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永遠の遠距離恋愛2

 



 二人肩を並べてスーパーマーケットの青果コーナーを廻る。きっと、どこから見ても仲の良い夫婦に見えるだろう。私はカートを押す彼の腕に手を回し、これ以上ないおしどり夫婦のような雰囲気を披露する。
 別に誰に見せるものじゃないが、いや、もしも彼の元彼女たちが見てたら嫉妬するようなラブラブさをもっと見せつけるだろう。

 ずっと会わなかった彼が私のところへ頻繁に足を運ぶようになった。季節ごとにしか会わなかった彼がここの所、毎月会いに来てくれてる。未だに遠距離恋愛には違いないが、頻繁に会うことで距離が近くなった気がする。遠距離でなく中距離?いや、近くても会わない間隔が長ければそれは遠距離恋愛と同じだ。そう考えると、会えない会わない恋人同士は誰しもが遠距離恋愛なのかもしれない。
 
 彼の心境の変化か、もしくは、独り身になって寂しさが増し、私で誤魔化してるのかもしれない。
 そんな彼の事情は私はどんなでも構わない。彼が目の前にいつもより「現れる」事実がリアルなのだから。
 この貴重な時間を私と彼とだけで共有しているリアルが大切なのだ。

「どしたの、ニコニコして?」彼が聞いてきた。
「へへっ、こういう普通のことをあなたとしたかったの」私は言った。
「トマト買って、キャベツ買って、そのチーズは嫌だって言うことが?」
「そう」
「あれ?昔、結婚は経験あるって言ってたじゃないか」
「こんなことしなかったもの。あなたはしてたの?」
「そういや、僕もしてないな」
 私に気を使って言ってくれてるのか、それとも彼の言うことが本当の事なのかどちらでも構わない。


 彼と私は昨日から知らない町で夫婦ごっこをやり始めた。
 Airbnbという民泊の部屋をネットで探し、海が見える町で「プチ同棲」をしようと彼が提案したのだ。
 2DKの普通のマンション、家具も家財道具も全部揃っている。
 住んでいた住人が蒸発でもしたかのような他人の家だけど、旅人のために綺麗なタオルにシーツと一通りのサービスは施してある。
 知らない町で夫婦ごっこの旅というのも新しい旅の遊び方かもしれない。

「ちゃんとごはんは作れるの?」私は聞いた。
「まかしときな、びっくりするくらいのを作ってあげるから」
「練習してきたの?」私はわかっていてもわざと聞く。
「昔、バイトで厨房に入ってたんだ。イタリアン」
「あら、初耳だわ」
「2週間でやめちゃったけどね」屈託なく彼は笑う。
「でも、料理は好きなんだ」続けて彼が言う。
「なんで?」
「女の子にモテるだろう?」

 私は彼の肩を叩いた。そういう仕草も疲れた主婦が集まるスーパーでは見ない光景だ。
私も普段スーパーには行くが無口で何も喋らず、黙々、献立や冷蔵庫の中身を考えながら買い物をしている。たまに仲の良い夫婦か恋人かわからないカップルを見ると実に羨ましい(笑)
 そして今、私は念願のといえば大袈裟だが遠距離の彼氏と夢を叶えている。
 たったこれだけのことが出来なかったというのもつらい過去でもあるが・・・。



作品名:永遠の遠距離恋愛2 作家名:海野ごはん