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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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あの日と同じに雨が降る 探偵奇談6

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瑞は、頂上の天狗鳥居の前に立ち尽くしていた。霧は晴れ、雨は止んでいる。真っ赤な夕日が海の向こうに沈んでいくのが見えた。身体も濡れていないし、まるでたったいま夢から目覚めた風だった。

「…これって、逆さ地蔵のせい?」

自分は、「いま」ではない「どこか」へ行っていたのだろうか。それとも、全部夢?世界中が夕焼けで真っ赤だ。雨上がりの澄んだ空気を突き抜ける強烈なその色に、しばし見惚れる。水平線を見つめ、ぼんやり佇んでいると。

「須丸」
「…あ!」

同じように呆けた顔で、伊吹が鳥居の向こうから歩いて来た。

「先輩どこ行ってたの!?勝手にずんずん進んでさ!」
「はあ!?俺のセリフだ!おまえどこで何してたんだよ!」
「だいたい…!あれ、ええと、どこではぐれたんでしたっけ?」
「……思い出せん」

どこからどこまでが現実だったのかはわからない。二人して白昼夢でも見ていたのだろうか。

「…先輩も、見た?」

たくさんの囁きと。
あの老人と。
小さな伊吹に出会って。
雨の中、このひとの手をとって。

今度こそ間違えないと。そう強く思った。

「同じ夢を見たのか?」
「さあ、わかんない…」

囁きが蘇る。老人の言葉が蘇る。
強い悔いを残した別れが、瑞を幾度も転生させていると。

(定めの子らよ 雨を降らせる神の子と 神の子を喰らった罪子よ)

囁きのその部分を、鮮明に思い出せる。引っかかる。何度も何度も、心の中で反芻する。どういう意味だろう。