小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

あの日と同じに雨が降る 探偵奇談6

INDEX|32ページ/32ページ|

前のページ
 


「須丸は、あの階段の先へ行ったんだな…おまえはそれを望んで、俺が叶えた。叶えなくてはならなかった。だけど本当は、行かせたくなかった…」

伊吹が呟くように言った。

いまじゃないいつかの世界で、先を行くか引き返すかの選択を、瑞は迫られていた。そして選んだ道は…
別れ、だったのだろう。

「なんか…くらくらする。気持ち悪い」

伊吹が突然座り込み、口を押えた。

「大丈夫ですか?」
「なんか、一気に頭の中にいろんなものが押し寄せてきたみたいで、すごく疲れる…」

鳥居を離れ、頂上広場の木製ベンチに伊吹を座らせた。眩しい夕焼けの反射する海が見える。

「いまの体験が、夢だったのか何だったのかはわからないけど…」

伊吹が疲労しきった声で言う。

「おまえが、この山の神様たちから大注目されてるってことは、わかったな」
「…オロカだのシレモノだの、さんざんな言われようだったんですけど…」

それを聞き、伊吹が不安を吹き飛ばすようにして笑う。つられて瑞も笑う。しかし頭の中ではさまざまな憶測が飛び交っては結びついていく。

オロカでシレモノな自分は、監視されている。神様たちにとって、この世界のことわりにとっての秩序を乱す者として。
天命に背き、生き死にを繰り返す。いつかの世で、別の誰かだったころ、この先輩との別れを選択したことを、なかったことにするために。

「…俺の曾祖父の話をするよ」

唐突に伊吹が言った。もう笑ってはいなかった。

「え?この前言ってた、話さなきゃいけないことっていうの?」
「うん…俺の名前と、おまえの話だ…」

雨の音が、聞こえるような気がした。
どこか遠くの、忘れ去られた遠い場所から。





.