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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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あの日と同じに雨が降る 探偵奇談6

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前世で、いや、幾度となくというのだから、もう前世どころの話ではないのか?これは幾度目のトライなのだろう。急激に押し寄せる不安と戸惑いに、瑞は言葉を失う。

「ひとには、定められた天命がある」

老人は静かに語る。

「そのもとで生きて死んでいくことが、幸福なのだ。つらいだけだ、こんなのは」

諦めたような口調で老人が言う。

つらいだけ?
あのひととの「いつか」を思い出そうとすることも?

「…じゃあ、もうなんにも知らんぷりして生きていけばいいっていうの?」

老人は黙してしまった。痛みをごまかすように。

懐かしさも。痛みも。無視して?
それができないから、こうして手探りで距離を計り合って、なんとか寄り添っているのだ。
つらさも痛みも、ないならその方がいいに決まっている。だけどもう無視できない。それほどまでに、かつての自分たちの魂は、つらく苦しかったのだとしたら。知らんぷりして生きていくことなどできない。救ってやりたいと思う。

「…ごめん、もう行かないと」

瑞は立ち上がった。老人に背を向ける。

「…そうか」

寂し気に笑う老人の顔。ああ、このひともきっと、自分にとってとてつもなく大切なひとだったに違いないのだ。
老人が手を差し出す。別れの挨拶をするように。瑞がその手を握ったその瞬間。

「!」

光が弾けて、周囲が真っ白になる。ああ、名前くらい聞けばよかった。お礼も言ってないのに。そんなことをぼんやり考えているうちに、意識が遠くなった。