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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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あの日と同じに雨が降る 探偵奇談6

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古びた石段が、濃い霧の中にまっすぐに続いている。脇にある灯篭に火がともり、誘うように揺れていた。ようやく足を止めた伊吹が、瑞を振り返った。無表情を浮かべている彼は、瑞の知る神末伊吹では、ない。雨にぬれ、それでもまっすくに射抜くように瑞を見つめている姿は、鬼気迫るものがあった。

「…行く?戻る?どうする?」

問われ、既視感が蘇った。瑞は、いつかの夢でこの場所を見た。このように無機質に話す伊吹と会った。雨の冷たさが、心の奥までしみこんでいく。

(そうだ、この石段…夢で見たんだ…)

この先へ進むのが、おまえの運命、約束なのだと。そう告げられたことを覚えている。だけど、これは夢じゃない。この先に進むと何があるのだろう。


「みず」


呼ばれた。振り返る。子どもがいる。伊吹だとわかった。面影がある。何より、自分はこの子どもにかつて出会ったことがある。びしょ濡れの子どもが、必死に訴えてくる。

「行って」

子どもの伊吹はそう言って、石段の上を指さす。その先には、瑞の先輩である伊吹がいて、冷たい表情を浮かべていた。子どもの伊吹は繰り返し行って、と乞うのだが、その声は弱く、今にも泣きだしそうだった。夢と違う。夢でこの子どもは、行かないでと懇願していたはずだ。

「…俺、行きたくないよ」

瑞は反射的にそう呟いていた。夢で、この子どもが戻ってこいと泣いていたことを思い出す。泣かせたくはないと、そう思うのだ。どうしてなのかは、もうわからないのだけれど。

「だめだよ、行かないとだめだよ」

子どもの伊吹が駄々をこねるように言うが、瑞は首を振る。濡れた髪からしぶきが飛ぶ。