あの日と同じに雨が降る 探偵奇談6
「どこか壊れているのかしら…いえ、きっと風のせいね。じゃあ続きを」
そう言って視線を戻す教師。生徒らもすぐに静けさを取り戻し、伊吹はマイケルとの別れを決意したキャサリンの切ない心情について訳を続けたのだが。
ギィ…
静寂を破る軋み。全員がその音がした方を見る。窓際の後方。掃除用具入れが音をたてながら、ゆっくりと開いていく。全員が凍り付いたようにそれを見つめる。扉が全開になり、ほうきやバケツが見えたところで、音と動きがやむ。
「…なんで?」
教師が走り、掃除用具入れを点検する。もちろん、壊れてなどいない。勝手にあくことなどありえない。
誰かが、中から開けたのでもなければ。
静まり返った教室に、異様な雰囲気が漂う。
「…授業を、続けます」
青ざめて教師が言った。しかし、生徒全員が教師の視線を追って言葉を失った。先ほど前田くんが閉めたはずの教室の扉が、今度は全開になっていたのだった。
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作品名:あの日と同じに雨が降る 探偵奇談6 作家名:ひなた眞白