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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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あの日と同じに雨が降る 探偵奇談6

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頂上にはすでに幾人かが到着していた。ほんの30分程度で登り切ることができた。思っていたよりもきつさはなくて、本当にお手軽な登山だった。

「うわ、海だ」
「超キレー!」

広々とした頂上からは港が見えた。青い海が眼下いっぱいに広がっている。ベンチがあり、シートを広げて弁当を食べている夫婦もいる。見晴台のさらにその奥に大きな鳥居と神社のようなものが見えた。あれが天狗鳥居か。生まれてくる命に運命を授ける天狗を祀った場所。

「郁~、写真とろ~!」
「うん」

友だちと写真を取り合いながら、郁は青空の下を満喫する。気持ちいい場所だ。

「あー昼寝できそう」
「ねー。たまにはいいね、こういうのも」

心地よい疲労に、草の上に寝そべっている生徒たち。転がって空を見ているとぼんやりとなって、ゆっくりと心が空っぽになるような感覚に陥る。草の上に座り、郁は水平線を見つめた。美波に聞いた、美しい夕焼けの話を思い出す。あの水平線に夕日が沈んでいくのを、瑞と伊吹に見せたいと思っているのだけど、部活が忙しくてそれどころではないのが現状だった。練習試合を控えているし、郁の気持ちもずっと緊張続きなのだった。

「お参りしてこうか」
「うんうん」

天狗鳥居をくぐり、古い社に手を合わせる。手入れされているのだろう。廃れている印象は受けない。

(今度の試合、満足のいく射ができますように…)

こんなときまで部活のことか、と郁は自分でそう思う。それだけ緊張して、心の多くをしめているのだろう。目を閉じて手を合わせる郁の耳に木々の囁きが降る。優しく頬を撫でる風。身体からすうっと力が抜けて、頭の中のごちゃごちゃしたものが静かに整理されていく感覚。

(あたしらしくがんばろう)

再び目を開けたとき、郁はそんなすがすがしい気分になっていた。登山でリフレッシュできたおかげなのか、それとも天狗の加護だろうか。


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