あの日と同じに雨が降る 探偵奇談6
この山は、いたる所に地蔵がある。登山口にあったのもその一つだ。そのうちのどれかが逆さ地蔵らしいが、どれが逆さ地蔵なのかはそのときによって、そのひとによって変わるのだという。ひとを選ぶということだろう。不思議な話だ。
「見つけることができれば、違う世界へ行けるってやつか」
「どれも同じに見えるけどな」
さわやかな風が吹き抜けていく。心地よい秋晴れだ。片隅に見える町の景色がだんだん小さくなっていった。
他愛もない話で笑いながら歩いているだけなのに、身体から余計な力が抜けてリラックスしている自分に気づく。
(俺、疲れてたのかなあ。すげえ癒される…)
綺麗な空気を吸って、清められた場所を歩く。それだけで重かった身体と心が軽くなっていくのがわかった。
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作品名:あの日と同じに雨が降る 探偵奇談6 作家名:ひなた眞白