乙女たちの幻想曲 第3回 稲妻が走るとき
いつの間にかしとしと雨が降っている中、真実子の自称元クラスメートは、向かって左側にあるアイボリー色の柵のそばまで真実子を連れていき、彼女から手を離すと柵の上に両腕を乗せた。
2人の目線の先には、休み時間や放課後に生徒たちの憩いの場となる生徒ホールが見える。雷斗は数人の女子生徒が居る生徒ホールをじっと見たあと、真実子の真隣に移動した。
「俺、昼にあそこで売ってるカレーが好きで、よく食ったな」
真実子も話を合わせた。
「ああ、カレーね。私もあのカレーは好きよ」
「おっ、仲間だ」
少年と少女は、軽く笑い合った。
それから、雷斗は真実子のほうを向いて尋ねた。
「真実子は、生徒ホールで売ってるメニューで一番好きなの、何だ?」
「私?私はツナパンが好き」
「ツナパンかぁ。それ、俺も食ったことあるぜ。確かにうまいよな」
彼女がうなずき、続いて彼もうなずいた。会話は途切れたが、2人は同じ方向を見つめた。
作品名:乙女たちの幻想曲 第3回 稲妻が走るとき 作家名:藍城 舞美