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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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通り過ぎた人々 探偵奇談5

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えにしの糸を伝う者



夏風邪みたいです。熱があるので今日の稽古は休みます。

瑞からのメールが届く。夏風邪だって?疲れが出たのだろうか。その疲れに思い当たるものを察し、伊吹は暗い思いで返事を送る。無理するな、とだけ。

「目玉焼き行ったよ!」
「はいはい」

テーブルの隅からシューッと皿が滑ってくる。早出だという看護師の母が、大急ぎで朝食の準備をしている。皿をキャッチした伊吹は携帯電話を制服のポケットに仕舞って食卓についた。

「そういやあんたさ、俺の名前は誰がつけたのってこの前聞いたでしょ?」

母は朝食をさっさと済ますと、リビングの鏡を見ながら髪を結い始める。

「ああ、うん…それが何?」

自分の名は、母の祖父、つまり伊吹の曾祖父がつけたのだと聞いた。

「その話聞いて思い出したの。あんたを妊娠した時、じいちゃんがしてくれた不思議な話」

不思議な話?

「あたしのじいちゃん…あんたのひいじいちゃんはね、戦争で両親を亡くして、その日ぐらしで子ども時代を生き延びたんだってよく話してたんだけど、そのときちょっと変わったおじさんに会ったんだって。あんたを妊娠したとき、じいちゃんはもう病院のベッドだったんだけど…横たわったまま話してくれたの。思い出したわ」
「…聞かせて」

母が語った曾祖父、神末功太郎(こうずえこうたろう)の話は、伊吹にとって衝撃的なものだった。


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