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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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通り過ぎた人々 探偵奇談5

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***

11歳だった功太郎は終戦後、空襲で焼けた町で鉄くずを拾ったり、家を直す手伝いなんかをしながら食いつなぐ日々を送っていたという。ひどい時代にあっても、一人で生きてゆかねばならない。そんな子ども達や、仕事を失った労働者が集まり、小さなコミュニティを築いて生活していた。

秋も過ぎたころだろうか。夜になり、仕事を終えた者たちが河原でたき火にあたっていた。そろそろ雪が降ってもいいだろうというほど、冷えた夜だったいう。

一人の男が、たき火に当たらせてくれとやってきた。

この辺では見かけない顔だった。年の頃は五十を過ぎたかそこらだったという。伸びきった髪と髭、ぼろぼろの服。みすぼらしい身なりであったが快活で、同じ身の上の仲間たちは温かく迎え入れた。

功太郎はそんな大人たちに交じり、湯を飲みながら話を聴いていた。男は愉快に話し、暗くなりがちであった一同を大いに笑わせるのだった。遠いところから流れてきたという男の話は興味深く面白かった。功太郎は夢中になって聞いていたという。

夜半を過ぎ、人々は小屋へと入って眠りについていく。やがて功太郎と二人になると、彼はこんなことを言った。

「俺はな、もうすぐ死ぬんだ」

突然何を言うのだろう。それまで機嫌よく話していた男は、たき火のあかあかとした色に照らされ、声をひそめて続ける。

「いつもそうなんだ。もやもやしていたものを思い出すと、死期が近づいているってわかるから」

そう言って、男は功太郎に尋ねた。

「なあ坊主、生まれ変わりって信じるか?」
「…生まれ、変わり?」
「俺はな、もう何回も何回も生まれ変わってるんだ。見てくれは変わっても、魂は同じ。目的のために、この魂が何度も何度も人生をやり直しているんだ」

この話をどう受け止めていいのか、功太郎はわからなかった。