小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

通り過ぎた人々 探偵奇談5

INDEX|8ページ/23ページ|

次のページ前のページ
 


ばっと目が開き、瑞は自室のベッドの上で覚醒する。夢だ…。身体がベッドに沈むような疲労が残っている。鮮明な夢だった。いま、すぐそばにまだ伊吹がいるような錯覚が残っているほどに。手首に痛みまで感じる。

(なんだろう…)

運命の選択を迫られていた。とんでもない夢だ。ここのところ、不思議な夢を幾度も見ている。自身の心の揺らぎや伊吹との距離を計りかねている苦悩が、夢に現れているのだろうか。

(それとも、全部本当のことなのか?)

自分は知らない「いつか」のことを、追体験しているような感覚だった。

「瑞?」

扉がノックされ、祖父が入ってきた。あたりは明るく、壁の時計を見ると七時を過ぎていた。寝坊だ。

「起きてこないから。どうした、しんどいのか?」
「…なんか、だるいんだ」
「疲れがでたんだろう。熱もあるようだし」

祖父の手が額に置かれる。冷たくて心地よかった。そうか、熱があるのか。どうりで身体が言うことをきかないわけだ。

「越してきて、気を張っていたからな」
「そうなのかな…自分では、意識してなかったけど…」
「意識する間もなかったんだろう。慣れない環境に、心も疲れている。今日はゆっくり休むといい」
「そうする…ありがとう…」
「診療所の生田先生を呼んでくるよ。寝てるんだぞ」

村はずれの診療所の老医師は、瑞も小さいころから世話になっている町医者である。祖父が行ってしまい、一人になった。

朝練、行けないな。ぼんやりする頭で思った。窓から風が入ってきて涼しい。夏がもうすぐ終わっていくのだ。