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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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通り過ぎた人々 探偵奇談5

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鏡の中の自分の前髪に、郁は感激する。
「上手だね。ありがとう」
「ん」
「それで、喧嘩って…」

髪の落ちた新聞紙を丸めながら、瑞はうん、と曖昧に頷く。

「もうちゃんと仲直りするから、いいんだ」

仲直りをするというわりに、寂しそうな言い方だった。郁の顔についた短い髪の毛を指先ではらってくれる瑞に、郁は重ねて尋ねる。

「でもムカついたって…」
「別にあのひとが悪いんじゃないんだ。何か嫌なことされたわけでも、言われたわけでもないし。俺が一方的に、腹たててる」
「どんなとこに?そういうのってさ、ちゃんと話した方がいいよ」

無責任かもしれないと思いつつ、郁は続ける。

「先輩後輩だし遠慮もあるけどさ、部活でも意見ぶつかることがこれからあるかもしれないし、お互い言いたいことワーッて言うのも大事だと思う。そうしないと伝わんないこともあるから、遠慮しなくていいと思うけどな。溜め込まれる方が、つらいことあるじゃん」

主将と副主将としてだって、意見を戦わせなければいけない場面が必要になってくるだろう。二人三脚でやっていくのだから、互いの胸のうちを知っておかなければ、いつか躓くときがくる。

「だから、須丸くんの思ってること、全部言っちゃっていいんじゃない?神末先輩なら、きっと…」

郁は言葉の続きを飲み込んだ。瑞の動きが、ぴたっととまる。虚空に視線を向けて固まったまま。その異様な様子にのまれる。

「…須丸くん?」