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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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通り過ぎた人々 探偵奇談5

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いつものクールな表情がみるみるうちに歪んでいく。あれれと思う間もなく、膝に顔を伏せてしまった。

「…」

郁が思っている以上に、彼は悩んでいるのかもしれない。副主将としての立場がプレッシャーであること以外のことでも。
胸のうちを語らず、ただ言葉にならない思いに押しつぶされるようにして顔を伏せている瑞を見て、郁はかける言葉を失う。どんな思いを抱えているか、想像もできない。いつも余裕があって、なんでもできて…。そんなひとだと思っていた。だけど、言えない痛みを抱えて、こらえているのかもしれない。

「……」

本当はものすごく、繊細なのだろうか。一つひとつの動作に気持ちを入れる、彼の射と同じに。まっすぐ、ひたすら前を見据える瞳は、あらゆる物事から逸れることができずに、愚直にぶつかっていくしかないのかもしれない。

(大丈夫だよ…)

そんな思いをこめて、丸まった背中をさすることしかできない。郁は硬い背中を何度もさする。

(一人じゃないからね…)

言葉にしても伝わらないとわかっているけど、せめて祈るようにそう心で呟いた。

瑞の背中から伝わる小さな震え。それがたまらなく憐れで、郁は腕を抱えた彼の手に触れる。熱い手だった。郁の手を握り返してくる。強い力で。


そんな夏の終わり。
複雑な感情を連れて、秋が来る。





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