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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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通り過ぎた人々 探偵奇談5

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「これで何度目かな…もう忘れてしまって、でも毎回毎回死ぬ前に思い出すんだ。今世でも、会えなかったなあ、って」

酔っぱらっているわけでもない、男は真剣にそんな話を続けている。どこか悲し気なその瞳に、功太郎は引き込まれていった。

「今世…?」
「そうだ。俺はひとを探して生まれ変わっているんだ。前世でも、その前もそのまた前も、あのときのカタチで出会えるまで何度も」

どうしてもうまくいかんのだ、と男は乱暴に髪をかきまぜる。

「あるときは平安の世で兄弟として、あるときは戦乱の世で親子として、あるときはもっと遠い未来で血を同じくする血族として出会うのに、互いに互いを認識できずにいた。忘れてしまっているんだな。転生を繰り返すうちに、だんだん血が混じらなくなってる。遠い存在になっていく。薄まるんだな。他人として出会って、過ぎ去っていく。それではだめなんだ。あのときの時間を取り戻せないんだ。お互いそれに気づかないまま…また来世に続く。これでもう幾度目か」

男はもう、功太郎に話しかけてはいなかった。虚空にむかい、ここにはいない誰かに、あるいは自分自身に確認するかのように滔々と話し続けている。なにかにとりつかれているかのように、異様な雰囲気だった。狂人なのかもしれない。

「時代を行き来し転生を繰り返していることを思い出すのは、いつも死の直前なんだ。だから、俺はもう長くないと思う。また…会えなかったなあ…」

一体、誰を。

「…あの、誰を、探しているの?」

男は火を見つめたままじっと黙っている。功太郎は緊張して答えを待つ。髭面の男の目は、炎をうつしてぎらぎらと光っているように見えた。瞬き一つしないその鬼気迫る横顔に、功太郎は逃げ出すこともできない。時間が止まったかのように、男は黙り込んでいたが、やがて。

「俺が名前をつけた子どもだ。伊吹…命を運んで吹いてくる風の名前を持つ」

男は言った。

「やっと、思い出したよ、そのことを」