歪んだたより 探偵奇談4
「何か…身に覚えとかないですか?んー、例えば、身近で亡くなったひとがいるとか」
「ないなあ」
「心霊スポットに行ったとか」
「ないねえ」
「うーん」
幽霊にまとわりつかれる理由はなさそうだ。
「女の人を見たのは、そのときくらいですか?」
深夜の勉強中に遭遇したというが…。
「ああいるなって感じたことは何度もあるの。トイレあけたとき、一瞬立ってる人を見たり、ベランダに影が映ってたり…。はっきり見た、っていうのはあんまりないけど、気配を感じることは多いかな」
今はどうですか、と続けて聴こうとして、郁は言葉を飲み込む。怜奈の瞳が見開かれ、表情がこわばったからだ。
「怜奈さん?」
「…いるわ」
見開かれた怜奈の瞳は、郁の背後の、キッチンへ通じる扉に注がれている。え、いるの?と郁もまた凍り付く。恐ろしくて振り返れない。
ガンッ!!
「!!」
まさかやっぱり、誰かが侵入してきたとでも言うのだろうか。大きな音がした。郁はキッチンへの扉を開けた。
「誰!?」
作品名:歪んだたより 探偵奇談4 作家名:ひなた眞白