歪んだたより 探偵奇談4
…誰もいない。しかし異変はすぐに目に入った。
「なにこれ…」
キッチンとバスルームの間の廊下に、さきほどまでなかったものが。
「ひっ…!」
郁の後ろからそれを確認した怜奈が悲鳴を飲み込んだ。
廊下の床に、包丁が突き刺さっている。垂直に。
さっきまで、こんなものはなかった。郁は急いで玄関を確認する。鍵もチェーンもかかっている。ここからは誰も入っていないし、外部から侵入できるもうひとつのベランダには、郁らがいた。間違いない。侵入者などいない。この現象は、すべて室内にいる何者かの仕業なのだ。
(…こんなの、いつか怜奈さんに危害が及ぶよ。だめだ、ここにいさせちゃ)
霊感のない郁でも、危機感を持った。
「でましょう、すぐに」
郁は怜奈の手を引いて、玄関まで引っ張る。
「…!!」
しかし怜奈は、突然床に座り込んでしまった。
「いたいっ…!」
「ど、どうしたんですか?」
右足首らへんを抑えている怜奈。
作品名:歪んだたより 探偵奇談4 作家名:ひなた眞白