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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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歪んだたより 探偵奇談4

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物の位置が変わるのも、テレビが勝手につくのも、気のせいや故障のせいにしてしまえばそれでよかった。何でもないのだと言い聞かせてやってきた。物音も、時折歩き回るような音が聞こえるのも、全部気のせいだと。

しかし、気のせいかもしれない、大丈夫だと、そういうふりを続けるほどに、現象は活性化していく。それもまた気のせいだと思ってやりすごすしかなかった。この部屋で生活を続けるためには。

しかし決定的な出来事が起きてしまう。

一週間前。夏も本番を迎える頃。夜中まで机にむかっていた怜奈は、突然身体が動かなくなった。なに、と思う間もなく、シャーペンを持った手も、足の先も、締め付けられるように動けなくなったのだ。金縛りだ。耳鳴りがして、部屋の空気が凝縮していく感覚。外側から、見えない壁に四方から身体を挟まれているような圧迫感。

怖い、と感じたとき。首筋に何かがさわった。さら、と。髪。長い髪。

おんなだ。

直観的にわかってしまった。髪の長い女が、後ろから自分の手元を覗き込んでいる。いや、手元ではなく、背後から怜奈の顔を覗き込もうとしているのだ。目を閉じることもできない。

(いやだ!)

女の顔が見えてしまう!視界の端に、鼻のようなものが、もう見えている。
もうだめ!

そう思った瞬間、ふう、と吐息が耳にかかり、金縛りは解けた。気配は去り、部屋には怜奈だけ。それでもわかってしまった。この部屋には、誰かがいる。見えない同居人が。



***