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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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歪んだたより 探偵奇談4

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「そんな日もある」
「ですねー。ちょっと休憩」

セミの鳴き声がわんわんと響いている。二人で並んで郁の射を見た。

あの夜の会話を、伊吹も瑞ももう蒸し返さなかった。

あのあと母に、伊吹は聴いてみた。俺の名前って誰がつけたの、と。

『なあに突然?小学生の宿題みたいなこと聴いて』
『いや、今まで聴いたことなかったなって』
『あんたのひいじいちゃんよ。わたしの祖父ね。お腹の中の子が男の子ってわかったときにね、つけてくれた』
『ひいじいちゃんて、俺が生まれる前に亡くなったんだよね?』
『そうね。あなたが生まれる二週間前だった。楽しみにしてくれてたけど、末期のがんでね』
『どういう意味、伊吹って』


『ひいじいちゃん、言ってたわ。命を運んで吹いてくる風の名前だって』


母は、瑞と同じことを言った。曾祖父と瑞にはなんの接点もない。曾祖父が生きているころ、もちろん瑞は生まれていない。神末家は京都にはなんのゆかりもないし、親戚もいない。

それが、伊吹の名で奇妙な接点を持った。ただの偶然だろうか。だがあの夜、瑞は確かに言った。俺がつけた、と。

でたらめを言ったのか。だけど、曾祖父とまったく同じことを口にしたという事実が、ひっかかって離れない。あの夜の会話、夢のように現実感のない会話。あれはなんだったのだろう。瑞は他にも何か言っていた。なんだったっけ、思い出せない…。